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寺生まれのTさんまとめ@オカ板
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55 :1/2:2011/03/08(火) 13:05:26.42 ID:/DoLyHcF0
「もし、そこの人」
会社帰りに私に声をかけてきたのは、今どき珍しい黒い和服の男だった。
「すみません、私は陰陽師をしているNといいます。」
「はぁ」
「――あなたは今、家族のことで悩んでいますね?」
ぎくりとした。
最近娘がよく魘されることを、私は知っていたからだ。
「――なぜそれを?」
「陰陽師だからですよ」
Nさんはそれから、その悪夢の原因は悪霊が妹にとり憑いていることをはなし、このお札を張っていれば安心ということを聞いた。
早速家に帰ると、娘の枕元にそれをはろうとしt
「破ぁ!!」
突然お札に光玉があたり、爆散した。
「それは魂を吸う呪いの護符だ!!」
そう云いつつ現れたのは寺生まれのTさんだ!!
「ぐぁぁぁぁ!!」
苦痛の声と共に護符から黒い煙が上がり、それはやがて巨大な鴉になった。
私は腰を抜かした。
大鴉は私目掛けて突撃してきた。
「危ない!!ぐっ!!」
Tさんが私を庇い、その爪につかまってしまった。
「…ああ、T、さ」
鴉は勝ち誇っているらしく、その嘴をTさんに突き立てようとしていた。

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56 :2/2:2011/03/08(火) 13:07:11.14 ID:/DoLyHcF0
「アーメン!!」
眩い光が鴉を襲い、それを吹き飛ばした。
「やれやれ、また大変なことになっているようですね。」
現れたのは教会生まれのKさんだった。
「…K…なんでこんなとこに…?」
「あんな禍々しい気に気づかない訳はないでしょう」
そう涼しい顔をするKを見て、Tさんはふっと笑みを浮かべると、鴉に向き直り構えた。Kさんも構えた。
「いたいけな少女の魂を狙う悪しき式神め!!」
「無垢なる少女の命を奪わんとする悪しき者の使いよ!!」
「お前には仏の慈悲もあるまい、阿鼻地獄へ落ちろ!!」
「あなたに神の加護はない、コキュートスに落ちよ!!」
「「破ぁ!!」」
二人とも手を強く翳すとそこから光が放たれ、鴉に命中した。
鴉は断末魔を残して消えた。

「――あれが悪しき陰陽師の使い魔ですか」
「そうだ。あいつは俺やお前を目の敵にしてくるだろう。」
「大丈夫です。正しき行いを積む我らが負けることなどありませんよ」
そう二人は語って笑いあっていた。

寺生まれと教会生まれって本当に凄い。
私は一切目を覚まさなかった娘を見ながらそう思った。


流れに乗らねばと思ってやった。
反省はしている。


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466 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 17:44:32 ID:DSZHszMl0
ある街の柱の上に幸福な王子の像が立っていました。王子の像は全体を薄い純金で覆われ、
目は二つの輝くサファイアで、王子の剣のつかには大きな赤いルビーが光っていました。
そんなとても美しい王子は、街に住む全ての人々の自慢でした。

ある晩、その街に小さなツバメが飛んできました。友達らはすでに六週間前にエジプトに
出発していましたが、そのツバメは残っていました。彼は最高にきれいな葦に恋をして、
冬が間近に迫るまで留まっていたのです。
しかし、どうしても靡くばかりで頼りない葦の様子にじれてやはり南に渡ろうと思ったのです。

「どこに泊まったらいいかな」一日中飛び続け、疲れ果てたツバメは言いました。
「泊まれるようなところがあればいいんだけれど」それからツバメは高い柱の上の像を見ました。
「あそこに泊まることにしよう」と声をあげました。「あれはいい場所だ、新鮮な空気もたくさん吸えるし」
そしてツバメは幸福の王子の両足のちょうど間に止まりました。

「黄金のベッドルームだ」ツバメはあたりを見まわしながらそっと一人で言い、眠ろうとしました。
ところが、頭を翼の中に入れようとしたとたん、大きな水の粒がツバメの上に落ちてきました。
「何て不思議なんだ!」とツバメは大きな声をあげました。
「空には雲一つなく、星はとてもくっきりと輝いているというのに、雨が降っているなんて。
北ヨーロッパの天候はまったくひどいもんだね。」 すると、もう一滴落ちてきました。

「雨よけにならないんだったら、像なんて何の役にも立たないな」とツバメは言いました。
「もっといい煙突を探さなくちゃ」ツバメは飛び立とうと決心しました。
でも、翼を広げるよりも前に、三番目の水滴が落ちてきて、ツバメは上を見上げました。
すると――何が見えたでしょうか。

幸福の王子の両眼は涙でいっぱいになっていました。そしてその涙は王子の黄金の頬を流れていたのです。
王子の顔は月光の中でとても美しく、小さなツバメはかわいそうな気持ちでいっぱいになりました。
「あなたはどなたですか」ツバメは尋ねました。

「私は幸福の王子だ」

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467 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 17:47:49 ID:DSZHszMl0
「それなら、どうして泣いているんですか」とツバメは尋ねました。「もう僕はぐしょぬれですよ」

「まだ私が生きていて、人間の心を持っていたときのことだった」と像は答えました。
「私は涙というものがどんなものかを知らなかった。というのは私はサンスーシの宮殿に住んでいて、
そこには悲しみが入り込むことはなかったからだ。庭園の周りにはとても高い塀がめぐらされていて、
私は一度もその向こうに何があるのかを気にかけたことがなかった。
周りには、非常に美しいものしかなかった。廷臣たちは私を幸福の王子と呼んだ。実際、幸福だったのだ、
もしも快楽が幸福だというならば。私は幸福に生き、幸福に死んだ。
死んでから、人々は私をこの高い場所に置いた。ここからは町のすべての醜悪なこと、
すべての悲惨なことが見える。私の心臓は鉛でできているけれど、泣かずにはいられないのだ」

「何だって! この王子は中まで金でできているんじゃないのか」とツバメは心の中で思いました。
けれどツバメは礼儀正しかったので、個人的な意見は声に出しませんでした。

王子の像は低く調子のよい声で続けました。「ずっと向こうの小さな通りに貧しい家がある。
窓が一つ開いていて、テーブルについたご婦人が見える。顔はやせこけ、疲れている。
彼女の手は荒れ、縫い針で傷ついて赤くなっている。彼女はお針子をしているのだ。
その婦人はトケイソウの花をサテンのガウンに刺繍しようとしている。
部屋の隅のベッドでは、幼い息子が病のために横になっている。
熱があって、オレンジが食べたいと言っている。母親が与えられるものは川の水だけなので、
その子は泣いている。
ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。私の剣のつかからルビーを取り出して、
あの婦人にあげてくれないか。両足がこの台座に固定されているから、私は行けないのだ」


468 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 17:49:57 ID:DSZHszMl0
「私は男の子が好きじゃないんです」とツバメは答えました。
「去年の夏、川のほとりにいたとき、二人の乱暴な男の子がおりました。
粉引きの息子たちで、二人はいつも僕に石を投げつけました。もちろん一回も当たりませんでしたよ。
僕たちツバメはそういうときにはとてもうまく飛びますし、その上、僕は機敏さで有名な家系の出ですから。
でも、石を投げてくるっていうのは失礼な証拠ですよね」

でも、幸福の王子がとても悲しそうな顔をしましたので、小さなツバメもすまない気持ちになりました。
「ここはとても寒いですね」とツバメは言いました。
「でも、あなたのところに一晩泊まって、あなたのお使いをいたしましょう」

「ありがとう、小さなツバメさん」と王子は言いました。

そこでツバメは王子の剣から大きなルビーを取り出すと、くちばしにくわえ、
町の屋根を飛び越えて出かけました。

ツバメは川を越え、船のマストにかかっているランタンを見ました。ツバメは貧民街を越え、
老いたユダヤ人たちが商売をして、銅の天秤でお金を量り分けるのを見ました。
やっと、あの貧しい家にたどり着くと、ツバメは中をのぞき込みました。
男の子はベッドの上で熱のために寝返りをうち、お母さんは疲れ切って眠り込んでおりました。
ツバメは中に入って、テーブルの上にあるお母さんの指ぬきの脇に大きなルビーを置きました。
それからツバメはそっとベッドのまわりを飛び、翼で男の子の額をあおぎました。
「とても涼しい」と男の子は言いました。「僕はきっと元気になる」そして心地よい眠りに入っていきました。

それからツバメは幸福の王子のところに飛んで戻り、やったことを王子に伝えました。「妙なことに」とツバメは言いました。
「こんなに寒いのに、僕は今とても温かい気持ちがするんです」

「それは、いいことをしたからだよ」と王子は言いました。
そこで小さなツバメは考え始めましたが、やがて眠ってしまいました。考えごとをするとツバメはいつも眠くなるのです。

469 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 17:56:44 ID:DSZHszMl0
「今夜、エジプトに行きます」次の日の朝、ツバメは言いました。ツバメはその予定に上機嫌でした。
町中の名所をみな訪れてから、教会の尖塔のてっぺんに長い時間とまっていました。
ツバメが行くところはどこでもスズメがチュンチュン鳴いていて、「素敵な旅人ね」と口々に言っていましたので、
ツバメはとてもうれしくなりました。
月がのぼると、ツバメは幸福の王子のところに戻ってきて声をあげました。「もうすぐ出発します」

「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん。もう一晩泊まってくれませんか」と王子は言いました。
「ずっと向こう、町の反対側にある屋根裏部屋に若者の姿が見える。彼は紙であふれた机にもたれている。
傍らにあるタンブラーには、枯れたスミレが一束刺してある。彼の髪は茶色で細かく縮れ、唇はザクロのように赤く、
大きくて夢見るような目をしている。彼は劇場の支配人のために芝居を完成させようとしている。
けれど、あまりにも寒いのでもう書くことができないのだ。暖炉の中には火の気はなく、空腹のために気を失わんばかりだ」

「…もう一晩、あなたのところに泊まりましょう」ツバメは言いました。
「もう一つルビーを持っていきましょうか」

「ああ!もうルビーはないのだよ」王子は言いました。
「残っているのは私の両目だけだ。私の両目は珍しいサファイアでできている。
私の片目を抜き出して、彼のところまで持っていっておくれ。彼はそれを宝石屋に売って、
食べ物と薪を買って、芝居を完成させることができるだろう」

「私にはできません」ツバメは泣き始めました。
「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん」と王子は言いました。
「私が命じたとおりにしておくれ」

そこでツバメは王子の目を取り出して、彼の部屋へ飛んでいきました。屋根に穴があいていたので、入るのは簡単でした。
ツバメは穴を通ってさっと飛び込み、部屋の中に入りました。その若者は両手の中に顔をうずめるようにしておりましたので、
鳥の羽ばたきは聞こえませんでした。そして若者が顔を上げると、そこには美しいサファイアが枯れたスミレの上に乗っていたのです。

若者は大声を出しました。「これは誰か、熱烈なファンからのものだな。これで芝居が完成できるぞ」若者はとても幸福そうでした。
470 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 18:00:34 ID:DSZHszMl0
次の日、ツバメは波止場へ行きました。大きな船のマストの上にとまり、水夫たちが大きな箱を
船倉からロープで引きずり出すのを見ました。箱が一つ出るたびに「よいこらせ!」と水夫たちは叫びました。
「僕はエジプトに行くんだよ!」とツバメも大声を出しましたが、誰も気にしませんでした。
月が出るとツバメは幸福の王子のところに戻りました。

「おいとまごいにやってきました」ツバメは声をあげました。

「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん」と王子は言いました。「もう一晩泊まってくれませんか」

「もう冬です」ツバメは答えました。「冷たい雪がまもなくここにも降るでしょう。王子様、僕は行かなくちゃなりません。
あなたのことは決して忘れません。来年の春、僕はあなたがあげてしまった宝石二つの代わりに、
美しい宝石を二つ持って帰ってきます。ルビーは赤いバラよりも赤く、サファイアは大海のように青いものになるでしょう」

「下のほうに広場がある」と幸福の王子は言いました。「そこに寺生まれの青年がいる。売り物のお札を溝に落としてしまい、
全部駄目になってしまった。お金を持って帰れなかったら、お父さんが彼ををぶつだろう。だから彼は泣いている。
彼は靴も靴下もはいていないし、何も頭にかぶっていない。私の残っている目を取り出して、寺生まれの青年にやってほしい。
そうすればお父さんからぶたれないだろう」

「もう一晩、あなたのところに泊まりましょう」ツバメは言いました。「でも、あなたの目を取り出すなんてできません。
そんなことをしたら、あなたは何も見えなくなってしまいます」

「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん」と王子は言いました。「私が命じたとおりにしておくれ」

そこでツバメは王子のもう片方の目を取り出して、下へ飛んでいきました。ツバメは寺生まれ青年のところまでさっと降りて、
宝石を手の中に滑り込ませようとしました。
ところが、その青年はひらりと身をかわし叫びました。「人を狙うとはなんと危険なツバメだ!」
そしてもの凄い速さで印を結び、「破ぁ!!」という掛け声とともに、ツバメ目掛けて青白い光弾を飛ばしてきました。

間一髪逃げ延びたツバメは宝石を寺の入口に置き、王子のところに戻りました。
473 :>>470と>>471の間が抜けていた。:2010/05/23(日) 18:12:35 ID:DSZHszMl0
次の日一日、ツバメは王子の肩に止まり、珍しい土地で見てきたたくさんの話をしました。
ナイル川の岸沿いに長い列をなして立っていて、くちばしで黄金の魚を捕まえる赤いトキの話。
世界と同じくらい古くからあり、砂漠の中に住んでいて、何でも知っているスフィンクスの話。
黒檀のように黒い肌をしており、大きな水晶を崇拝している月の山の王の話。
広く平らな葉に乗って大きな湖を渡り、蝶といつも戦争しているピグミーの話。

「可愛い小さなツバメさん」王子は言いました。「あなたは驚くべきことを聞かせてくれた。
しかし、苦しみを受けている人々の話ほど驚くべきことはない。度しがたい悲しみ以上に解きがたい謎はないのだ。
小さなツバメさん、町へ行っておくれ。そしてあなたの見たものを私に教えておくれ」

ツバメはその大きな町の上を飛びまわり、金持ちが美しい家で幸せに暮らす一方で、
乞食がその家の門の前に座っているのを見ました。暗い路地に入っていき、ものうげに
黒い道を眺めている空腹な子供たちの青白い顔を見ました。橋の通りの下で小さな少年が二人、
互いに抱き合って横になり、暖め合っていました。「お腹がすいたよう」と二人は口にしていましたが「
ここでは横になっていてはいかん」と夜警が叫び、二人は雨の中へとさまよい出ました。

それからツバメは王子のところへ戻って、見てきたことを話しました。

「私の体は純金で覆われている」と王子は言いました。「それを一枚一枚はがして、貧しい人にあげなさい。
生きている人は、金があれば幸福になれるといつも考えているのだ」

ツバメは純金を一枚一枚はがしていき、とうとう幸福の王子は完全に輝きを失い、灰色になってしまいました。
ツバメが純金を一枚一枚貧しい人に送ると、子供たちの顔は赤みを取り戻し、笑い声をあげ、通りで遊ぶのでした。
「パンが食べられるんだ!」と大声で言いました
471 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 18:03:04 ID:DSZHszMl0
「あなたはもう何も見えなくなりました」とツバメは言いました。「だから、ずっとあなたと一緒にいることにします」

「いや、小さなツバメさん」とかわいそうな王子は言いました。「あなたはエジプトに行かなくちゃいけない」

「僕はずっとあなたと一緒にいます」ツバメは言いました。そして王子の足元で眠りました。


やがて、雪が降ってきました。その後に霜が降りました。通りは銀でできたようになり、たいそう光り輝いておりました。
水晶のような長いつららが家ののきから下がり、みんな毛皮を着て出歩くようになり、子供たちは真紅の帽子をかぶり、
氷の上でスケートをしました。

かわいそうな小さなツバメにはどんどん寒くなってきました。でも、ツバメは王子の元を離れようとはしませんでした。
心から王子のことを愛していたからです。パン屋が見ていないとき、ツバメはパン屋のドアの外でパン屑を拾い集め、
翼をぱたぱたさせて自分を暖めようとしました。

でも、とうとう自分は死ぬのだとわかりました。ツバメには、王子の肩までもう一度飛びあがるだけの力しか残っていませんでした。
「さようなら、愛する王子様」ツバメはささやくように言いました。「あなたの手にキスをしてもいいですか」

「あなたがとうとうエジプトに行くのは、私もうれしいよ、小さなツバメさん」と王子は言いました。
「あなたはここに長居しすぎた。でも、キスはくちびるにしておくれ。私もあなたを愛しているんだ」

「私はエジプトに行くのではありません」とツバメは言いました。「死の家に行くんです。『死』というのは『眠り』の兄弟、ですよね」

そしてツバメは幸福の王子のくちびるにキスをして、死んで彼の足元に落ちていきました。
その瞬間、像の中で何かが砕けたような奇妙な音がしました。それは、鉛の心臓がちょうど二つに割れた音なのでした。ひどく寒い日でしたから。

472 :本当にあった怖い名無し:2010/05/23(日) 18:07:32 ID:DSZHszMl0
次の日の朝早く、市長が市会議員たちと一緒に、像を見上げていました。
「おやおや、この幸福の王子は何てみすぼらしいんだ」と市長は言いました。
「ルビーは剣から抜け落ちてるし、目は無くなってる。これでは乞食とたいして変わらんじゃないか」
「それに、死んだ鳥なんかが足元にいる」市長は続けました。
「われわれは実際、鳥類はここで死ぬことあたわずという布告を出さねばならんな」
そこで書記がその提案を書きとめました。

そこで彼らは幸福の王子の像を下ろしました。
「もう美しくないから、役にも立たないわけだ」大学の芸術の教授が言いました。

溶鉱炉で像を溶かすときに、その金属を使ってどうするかを決めるため、市長は市議会を開きました。
「もちろん他の像を立てなくてはならない」と市長は言いました。「そしてその像は私の像でなくてはなるまい」

「いや、私の像です」と市会議員たちがそれぞれ言い、口論になりました。私が彼らのうわさを最後に聞いたときも、まだ口論していました。

「おかしいなあ」鋳造所の労働者の監督が言いました。「この壊れた鉛の心臓は溶鉱炉では溶けないぞ。捨てなくちゃならんな」
心臓は、ごみために捨てられました。そこには死んだツバメも横たわっていたのです。

あくる日、そのごみだめに寺生まれの青年がごみ漁りにやってきました。

「もったいない、鉛が捨てられている。これでありがたい仏像を作るとしよう」
「おや、こちらにはツバメが死んでいる。可哀想に。上手いことしてあげよう。破ぁ!」

こうして、幸福な王子様の像とツバメは、上手いこと幸せになったそうです。
寺生まれってっやぱりすごい。お堂から街を眺めながら、王子の仏像はそう思いました


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389 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:04:52 ID:Rke/28tr0
これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、
早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
都会とは違い、空気が断然うまい。
僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。

そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風か止んだ。
と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、
さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。

すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。

その方向には案山子がある。
『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、
兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。

僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。

何だ…あれは。

遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。

しかも周りには田んぼがあるだけ。
近くに人がいるわけでもない。

拍手

390 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:10:38 ID:Rke/28tr0
僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。

『あれ、新種の案山子じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かった
から、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』

兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。


兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、
はりきって双眼鏡を覗いた。

すると、急に兄の顔に変化が生じた。

みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、
ついには持ってる双眼鏡を落とした。

391 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:11:27 ID:Rke/28tr0
僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』

兄はゆっくり答えた。

『わカらナいホうガいイ……』

すでに兄の声では無かった。

兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと
落ちてる双眼鏡を拾い、恐る恐る兄が見ていた方角にレンズを向け、
そして驚愕した。


田んぼの向こうでゆらめくもの、それは白いカッターシャツを着たTさんだったのだ。

あの寺生まれで霊感の強いTさんが、狂ったように笑いながら、くねくね、くねくねと乱舞していたのだ。

人間とは思えない程なめらかな腰使い、がむしゃらながらも確かなキレのあるステップ。
そして満開の笑顔、ほとばしる汗・・・

それは初期衝動としか言いようのない、どんなジャンルにも属さない
オンリーワンのダンススタイル。
なまめまかしく蠢く指の一本一本までもが、何かを表現しているようだ。

夕日というミラーボールに彩られ、人生というダンスホールで
いつまでも踊り続けるTさんを見ながら
寺生まれはやっぱりスゴイ、心からそう思った。


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334 ::2009/12/24(木) 12:24:53 ID:kZb3bm7bO
2年ほど前だろうか。僕は彼女に指輪をプレゼントしようと歩きで宝石店に向かっていた。賑やかな通りに出るまで、割と細めの道が続き踏み切りが1つある。

普段は車が多いのだが、やはり特別なものを買うのだから、自分の足で向かいたかった。
踏み切りが目の前に見えてくると、カンカン鳴りはじめたが上機嫌な僕は小走りで駆け抜けようとした。


ガッ!・・・!?突然足に何かが引っ掛かり、転んでしまった。  足元に目をやると両足首が青白い手に捕まれている。
とてつもない力で、とても振りほどけない。まだ電車は見えない。
僕は自由な手を使って向かいで踏切待ちをしている車に向かって必死で手を振った。しかしまるで僕の存在がないものであるかのように気付いてくれない。


今まで数回心霊体験をしたせいで、変に付け狙われる体質になっちまったのか・・・そんなことを心で嘆いている内に左右から電車がやってきた。やはりブレーキをかけるそぶりすらない。
「見えてないのかよ!!」
諦めて死を覚悟した。


すると僕の眼前に大の字に立ちはだかる人が!!寺生まれで霊感の強いTさんだ!上下スウェットのTさんは何か呪文のようなものを小さい声で唱えると両手を左右にビシッと広げ「破っ!」と叫んだ。


すると左右の電車の前に青く光る大きな壁が現れた!僕の足首をつかむ感覚もきえた。壁にぶつかる衝突音もなく電車の勢いがピタリと止まった。するとTさんはため息を吐きながら腰の抜けた僕を抱え上げ、踏切を出た所で再び「破!」と叫んだ。
その途端電車がすごいスピードで通過していった。


「Tさん、なぜここに?」
Tさんは「ダイヤを乱しちまったかな?ハハ」と言いながらジョギングしていった。
その後ろ姿を見て、寺生まれはスゴい。改めてそう思った。

拍手


308 :本当にあった怖い名無し:2009/12/06(日) 19:27:28 ID:jdwhHazb0
299 本当にあった怖い名無し 2009/09/28(月) 04:45:07 ID:fooGk+L3O
怖い話というか、新しく発見した話を

自分は常々幽霊はいると思っている。っというか広い宇宙、UMA、宇宙人よろしく、まだ確認、発見されてない物なぞ、いくらでもあると考えているからだ。

考えるようになったが正確か。
勿論いまいる空間、空気中にもあるかも知れない

自分の知り合いに寺生まれのT(仮)と言うやつがいる。
彼は日頃からよく、金縛り、ワンピースの女云々、不思議な体験をしていると言っていた。

自分は勿論、彼の語る不思議体験を話半分を聞いていたわけだが…
ある日、彼を含めた知り合い何人かで某滝に行くことになった。
所謂超有名心霊スポット。

季節は秋、深夜2時。

そこに向かう車内、異様なテンションの中で見えると豪語するTにかけられた期待は大きかった。誰も口にはださなかったが。

現地に着くと中々いい雰囲気
かなり肌寒い中、滝の流れる音と草木がすれる音がする。

拍手

309 :本当にあった怖い名無し:2009/12/06(日) 19:28:12 ID:jdwhHazb0
300 本当にあった怖い名無し 2009/09/28(月) 05:04:19 ID:fooGk+L3O
その雰囲気にのまれ全員押し黙っている

「…破っくしょい!」

Tだ。

「風邪でもひいたか?www」
「馬鹿でも風邪ひくのか?ww」
などとみんなTをちゃかす。Tも「あ゛ー」といいながら鼻をすすっている。
それにより若干全員の緊張が緩んだ。

なをも2回、3回とくしゃみをするT。

…4回、5回

中々止まらない

…10回、15回

「おいおい、くしゃみしすぎだろ」
もうかれこれ30分はくしゃみをしている。

結局幽霊も何もみずに帰宅することに。Tのくしゃみは止まらない。
一行はそのまま24時間開いてるファミレスへ入り、今日の感想を言い合う事にする。

別に何もなかったね、などと話していると不意にTが口を開いた。

「いや実際やばかったよ、数えきれないぐらいいっぱいいた。一人ファミレスの入口までついて来てたしw」

310 :本当にあった怖い名無し:2009/12/06(日) 19:30:27 ID:jdwhHazb0
301 本当にあった怖い名無し 2009/09/28(月) 05:18:08 ID:fooGk+L3O
一同、は?ってなった。

自分「いやいやお前普通だったじゃんw」

T「普通じゃなかったべ?くしゃみいっぱいでたしw」

自分「意味わかんねwくわしく説明しろ!」

T「いや俺幽霊限定なんだけど、近くにいるとくしゃみでるんだよねw」

そういえばファミレスに入ってからはくしゃみをしていない。
しかし俄かには信じられない。
そんな事ってあるのか?と思いながらファミレスをでた瞬間、またTがくしゃみをする。

「まだいたのかー、今日は俺についてくるきだな。うち寺だしまぁいいけどw」

Tは寺についてもまだくしゃみをしていた。


後日Tにあれは本当だったのか聞いてみた。

「うん。なんかアレルギーみたいなものなんだよね。その日の調子によってもかわるけど、大体5m圏内にいるとくしゃみが止まらなくなるw便利だろ?案外幽霊もなんかの物質でできてて、それのアレルギーなのかもなw」

と笑っていた。



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263 :本当にあった怖い名無し:2009/11/06(金) 01:53:18 ID:DTO0s9lc0
昔うちの近所に変な自販機があった。
何故か日によってある場所が違い、どこにもない日もあった。
売っているものは「心霊写真」。
10枚位陳列されていて、写りがいいものほど値段が高かった。
漏れは買った事なかったけど。

ある時、ふと興味が湧いてその写真を買ってみようと思った。
夕暮れに染まる例の変な自動販売機。今日はちゃんとある。
小銭を持って何故だかドキドキしながら近づいて行くと、
突然自動販売機が2本の足を生やして立ちあがった!

いや、よく見ると若い男が自動販売機を担いでいたのだった。
「なんだボウズ?今日はもう終わりだぞ」
そう言ってその男はそのまますたすたと歩いて行った。
「また明日な。…破ぁ、こいつを背負って週5で寺との往復はきついぜ。
おまけにさっぱり売れないと来たもんだ。やっぱ寺に持ち込まれた
写真の焼き増しじゃあダメなのかな。
しかし親父の目を盗むのは大変で写真ぐらいしかブツブツ…」

寺生まれっていろいろと大変だな。
後ろ姿を豆粒ぐらいになるまで見送りながら、改めてそう思った。

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226 :本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 01:31:30 ID:0nEIr9tZO
友達と二人で夜道を歩いたいた時なんですけど、その日は部活で遅くなって、近道をしたんです。
その近道…っていうのが、墓地を抜けるんです。
一人だととても怖いんですけど、友達と二人だったから『ま、いっか』みたいな感じで。
墓地の半ばに来た頃、なんだか急に重苦しくなっちゃって…
友達も「嫌な感じ」と泣きそうに…
その時、物音がしたんです!二人して抱き合って、腰が抜けちゃって、その場に座り込んじゃって、泣きじゃくってました。
凄く怖かったんです。
暫くすると、その辺の墓石から無数の人魂の様な物が、私達を取り囲む様に迫って来ました。
もうどうしていいかわからない。ここで死ぬのかなぁ…なんて、色々な想いが頭をよぎりました。
その時、友達のカバンの中から、けたたましい男勝りの笑い声が、墓地一帯に木霊したんです!
「あーっ破っ破っ破!あーっ破っ破っ破!」
笑い声と共に、純白の光が、まがまがしい人魂に向かって放たれました!
そういえば部活の時、景品が当たったと某巨大女性歌手の人形を持ってきて見せてくれたんです。
カバンから取り出すと、のたうち回りながら光弾を放ち続けてました。
やがて、人魂は消え去り、私達は助かったんです!
今度は嬉しくて泣きました。
すると…近くの木の陰から、男の人が泣きながら怒り顔で飛び出してきました。その人は、憎しげに人形を睨みつけ…
「破っ!破っ!破っ!…」
と青い光を腕から出して、人形を打ち続けました。
「!…何するんですか!」
私は怒りながら文句を言いました。
「…貴様のせいで!貴様のせいで、女子高生と仲良くなるチャンスを無くしたじゃないか!潰してやる!破っ!破っ!破っ!」
人形は粉々にされてしまいました。

寺生まれって酷い…本当に憎らしく思いました。

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164 :本当にあった怖い名無し:2009/09/28(月) 16:30:43 ID:CxYrPOX+0
ある日、いつも通り愛車に乗って山道をドライブしに行った時の事だ
山道では珍しくもないくねくねした道、僕はそこを風を切って車を走らせるのが好きだ
そこで、バックミラーに高速で動く物が見えた、覗いてみると、なんとそれはもの凄い速度で走ってくるおばあちゃんだった!
おばあちゃんはたちまち僕の車の横につき、そのまま追い抜こうとしている!
そこで、後ろから声が聞こえた。
「やれやれ、しかたねえな、どれ、俺にハンドルを貸してみろ」
後部座席を見ると、そこには寺生まれで霊感の強いTさんがいた!
「さて、ばあちゃん、俺と勝負だ!付いてこれるかな?」
そして始まる峠最速決定戦!Tさんとばあちゃんは数十分にも渡りデッドヒートを繰り広げた
そして、落石事故が多い箇所が近づいてきたとき、ばあちゃんを狙ったかのように頭上から岩が落ちてきたのだ
まさかの事態に仰天して、腰を抜かすばあちゃん!
「チッ、仕方ねぇ!破ぁ!」
Tさんの手から発射された光弾が一撃で岩を粉砕した
涙を流して、自分の負けを認めたおばあちゃんを見て、寺生まれってすごい、僕は改めてそう思った・・・

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154 :1:2009/09/27(日) 17:54:38 ID:M8Eyd9CgO
近所の丘の上に女子短期大学があって、そこの校舎から少し離れた小さな林の中に、
ピアノの練習のための小さな建物がポツンとあって、その建物の前に白塗りの綺麗な
木製のベンチがあって、前からいいベンチだなあと思っていた俺は、弟と二人して夏
休み中のある夜中に重たい思いして盗んで来た。

うちは小さな貸しビルをやっていて、最上階に住んでいたんだけど、狭いながらも
屋上があって、その屋上に白いベンチを置いて、夜中にそこに座ってビール飲んだり
煙草をふかしたりして、何となくいい気持ちになったりしていた。

155 :2:2009/09/27(日) 17:56:30 ID:M8Eyd9CgO
うちの母親はちょっと霊感みたいなものがあって、ある晩のこと、家族でメシを食っ
ていると、いきなり「誰か屋上にいる」と言いだして、それで、見に行ってみても誰
もいない。
そんなことが何回かあって、足音が聞こえるだの線香臭いだの、不気味な事ばかり言
うから、あのベンチに何かいわくでもあるのかと聞き込み調査をしたら、その短大の
すぐそばに住んでいる弟の友達から、あのベンチに足をかけてかたわらの木で首を吊
った女子学生がいた、という話を聞いた。

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156 :3:2009/09/27(日) 17:59:13 ID:M8Eyd9CgO
それは、やっっぱりちょっとヤバイということになって、早速、また弟と重いなあ。
などと文句を言いながら、夏の終わりの夜中、丘の上にある短大への坂道をベンチを
運んで登っていると、もう夜中の2時頃だったというのに、白いワンピースを着た女が
坂道を下って来る。
弟と俺は何となく立ち止まって、ベンチを下ろし、女の方を見てみると、その女は手に
ロープのようなものをぶら下げていた。
それを見た瞬間、俺は弟に「逃げろ!」と叫んで、一目散に坂道を走り、逃げた。
足の速かった弟は、俺を抜かして、もの凄い勢いで逃げて行った。

157 :4:2009/09/27(日) 18:01:59 ID:M8Eyd9CgO
「待ってくれ~」と言いながら俺も懸命に走った。
が、ころんでしまった。痛てっ、と、起きあがろうとしたが、膝に力が入らない。
ころがるようにしてアスファルトの路面に打ちつけた頭を抱えるようにしながら、
見ちゃだめだと思いつつも、後ろを向くと、カーブしている道路の端の方に置き去
りになっているベンチに、その女は座って、こちらを見ていた。
眼が合ったような気がした。
全てを諦めかけたその時、ふと、どこか聴き覚えのあるメロディが聴こえてきた。

158 :5:2009/09/27(日) 18:03:36 ID:M8Eyd9CgO

~Well billy rapped all night about his suicide
How he kick it in the head when he was twenty-five
Speed jive dont want to stay alive. When youre twenty-five~

Mott The hoopleの往年の名曲、"All The Young Dudes"だ。誰かが俺の後ろでこの
懐かしいバラードを口ずさんでいるのだ。
「誰でもいい…助けてくれ!」藁にも縋る想いで振り返った俺の視線のその先に、
寺生まれのTさんはいた。

159 :6:2009/09/27(日) 18:07:06 ID:M8Eyd9CgO
「And wendys stealing clothes from marks and sparks. And freedys got spots
from ripping off the stars from his face~ 
って、なにじろじろ見てんだ!夜の散歩中に歌ってたら悪いかよ!
こういう時は見て見ないフリをするのがマナーだろうが!んーっ破ぁっ!!」


どのくらい時間がたっていたのか、俺は弟と母親に起こされた。
俺があまり遅いので、母を起こして、弟が迎えに来てくれたわけだ。

160 :8:2009/09/27(日) 18:08:47 ID:M8Eyd9CgO
うちは母子家庭だったからというわけでもないけど、家族3人、まあ仲がいい方だった
から、母親は文句も言わず、「さあ帰るよ」と言っただけだった。
見るのもイヤだったから、弟にベンチにまだ女は座っているか?と聞くと、弟は
「もう、いない」と言った。
次の日病院に行くと、肘にヒビが入っているということで、ギブスされた。
後頭部にはれがあり、脳震とうを起こしたらしいということで、レントゲンも撮られた。

まあ、そんなことはどうでもイイが、あのベンチは林の裏にあるぼろ寺の境内に、

今でもある。


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106 :その1:2009/09/10(木) 01:54:05 ID:fhlpOEYw0

マユミという名の女子高生が学校に向かって歩いていました。
いつもと同じ時間に、いつもの道をいつもと同じ速さで歩いていく。
すると、ふと目の前に同じ学校の制服が見えた。近づいていくと、それは同じクラスの生徒で、
しかもいつもいじめられている女の子だ。クラス全員が彼女をイジメていた。
先生もイジメを知りながらも見て見ぬふりをしていた。
女子校なので、結構エグイことをする。無視をする時もあれば、
使用済みの生理用品を机の上に置いたりなんてこともあった。
マユミちゃんも、特に彼女を憎らしいと思ったことはなかったが、
自分だけイジメをしないわけにもいかず、周りにあわせて、
無視やひどいことを言ったりしたりしていた。
だんだん近づいていくと、いじめられっこの彼女がとっても嬉しそうな顔をしているのが見えた。
幸せそうな笑顔で飛び跳ねている。
マユミちゃんは、その姿を不思議に思いながらも彼女のすぐ近くまで来た。
彼女はマンホールの上で跳ねていた。とっても幸せそうな顔をして、
なぜか「九、九、九…」と言っている。
「何してるの?」尋ねてみた。
しかし、彼女は返事をせずに「九、九、九…」といいながら跳ねている。
「無視してんじゃないよ」今度は口調を強めて言った。
しかし、彼女は返事をしないで、相変わらず同じことを続けている。

今まで、特別に彼女を憎らしく思っていなかったが、嬉しそうに、
しかも自分を無視したことで、何か急にとてつもなく強い感情が湧き起こってきた。
しかし、それを抑え込んで、「なんで、そんなことしてんのよ?」もう一度尋ねた。
それでも、彼女は何も聞こえないみたいに嬉しそうに跳ねている。
ここにきて、マユミちゃんの中で今までと違った感情が生まれた。

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107 :その2:2009/09/10(木) 01:56:17 ID:fhlpOEYw0

ひょっとしたら‘マンホールの上で数字を言いながら跳ねる’ということは
とっても楽しいことではないのか、そんなことを思った。
バカらしいとは考えつつも、微かにそんな思いが頭の中をよぎった。
複雑な思いに戸惑いを感じながらも、
とにかくマンホールの上で楽しそうに跳ねる彼女の邪魔をしたくなった。
いじめられっこの彼女がなんでこんな楽しそうにしているの、なにか納得できない、
そんな感情に身を任せ「ちょっと退きなさい。私がやるから」そう言って、
強引に彼女を押しのけ、マンホールの上に立った。
足をわずかに曲げ、すこし腰を低くしてから思いっきり上に跳びあがる。
その瞬間、となりに押しのけられた彼女がすばやく渾身の力でマンホールの蓋を取った。

「破ぁーーーーー!!」

穴の中から放たれた巨大な青白い光弾によって、マユミちゃんはすごい勢いで
真っ直ぐ空に打ち上げられていった。
遥か上空でキラリとひと輝きして、そのまま星になったマユミちゃん。

「周囲の雰囲気につい流されて始めたいじめでも、続けていればやがて心は魔性に取り憑かれる。
俺が払ったのはマユミちゃん、そんな君の心に巣食う魔性だったんだ。君は本当は優しい子の筈だ。
これを機にイジメは、ってあれ?マユミちゃん?」

マンホールの穴の中からする声が「マユミちゃんどこにいるの?」と続けている所に
いじめられていた彼女は上から蓋を閉めて、

「寺生まれって、凄い…」
とっても幸せそうな顔で改めてそうつぶやいた。
 



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