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寺生まれのTさんまとめ@オカ板
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389 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:04:52 ID:Rke/28tr0
これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、
早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
都会とは違い、空気が断然うまい。
僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。

そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風か止んだ。
と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、
さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。

すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。

その方向には案山子がある。
『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、
兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。

僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。

何だ…あれは。

遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。

しかも周りには田んぼがあるだけ。
近くに人がいるわけでもない。

390 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:10:38 ID:Rke/28tr0
僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。

『あれ、新種の案山子じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かった
から、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』

兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。


兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、
はりきって双眼鏡を覗いた。

すると、急に兄の顔に変化が生じた。

みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、
ついには持ってる双眼鏡を落とした。

391 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:11:27 ID:Rke/28tr0
僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』

兄はゆっくり答えた。

『わカらナいホうガいイ……』

すでに兄の声では無かった。

兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと
落ちてる双眼鏡を拾い、恐る恐る兄が見ていた方角にレンズを向け、
そして驚愕した。


田んぼの向こうでゆらめくもの、それは白いカッターシャツを着たTさんだったのだ。

あの寺生まれで霊感の強いTさんが、狂ったように笑いながら、くねくね、くねくねと乱舞していたのだ。

人間とは思えない程なめらかな腰使い、がむしゃらながらも確かなキレのあるステップ。
そして満開の笑顔、ほとばしる汗・・・

それは初期衝動としか言いようのない、どんなジャンルにも属さない
オンリーワンのダンススタイル。
なまめまかしく蠢く指の一本一本までもが、何かを表現しているようだ。

夕日というミラーボールに彩られ、人生というダンスホールで
いつまでも踊り続けるTさんを見ながら
寺生まれはやっぱりスゴイ、心からそう思った。

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390 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:10:38 ID:Rke/28tr0
僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。

『あれ、新種の案山子じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かった
から、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』

兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。


兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、
はりきって双眼鏡を覗いた。

すると、急に兄の顔に変化が生じた。

みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、
ついには持ってる双眼鏡を落とした。

391 :本当にあった怖い名無し:2010/01/23(土) 17:11:27 ID:Rke/28tr0
僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』

兄はゆっくり答えた。

『わカらナいホうガいイ……』

すでに兄の声では無かった。

兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと
落ちてる双眼鏡を拾い、恐る恐る兄が見ていた方角にレンズを向け、
そして驚愕した。


田んぼの向こうでゆらめくもの、それは白いカッターシャツを着たTさんだったのだ。

あの寺生まれで霊感の強いTさんが、狂ったように笑いながら、くねくね、くねくねと乱舞していたのだ。

人間とは思えない程なめらかな腰使い、がむしゃらながらも確かなキレのあるステップ。
そして満開の笑顔、ほとばしる汗・・・

それは初期衝動としか言いようのない、どんなジャンルにも属さない
オンリーワンのダンススタイル。
なまめまかしく蠢く指の一本一本までもが、何かを表現しているようだ。

夕日というミラーボールに彩られ、人生というダンスホールで
いつまでも踊り続けるTさんを見ながら
寺生まれはやっぱりスゴイ、心からそう思った。

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