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- 154 :1:2009/09/27(日) 17:54:38 ID:M8Eyd9CgO
- 近所の丘の上に女子短期大学があって、そこの校舎から少し離れた小さな林の中に、
ピアノの練習のための小さな建物がポツンとあって、その建物の前に白塗りの綺麗な
木製のベンチがあって、前からいいベンチだなあと思っていた俺は、弟と二人して夏
休み中のある夜中に重たい思いして盗んで来た。
うちは小さな貸しビルをやっていて、最上階に住んでいたんだけど、狭いながらも
屋上があって、その屋上に白いベンチを置いて、夜中にそこに座ってビール飲んだり
煙草をふかしたりして、何となくいい気持ちになったりしていた。
- 155 :2:2009/09/27(日) 17:56:30 ID:M8Eyd9CgO
- うちの母親はちょっと霊感みたいなものがあって、ある晩のこと、家族でメシを食っ
ていると、いきなり「誰か屋上にいる」と言いだして、それで、見に行ってみても誰
もいない。
そんなことが何回かあって、足音が聞こえるだの線香臭いだの、不気味な事ばかり言
うから、あのベンチに何かいわくでもあるのかと聞き込み調査をしたら、その短大の
すぐそばに住んでいる弟の友達から、あのベンチに足をかけてかたわらの木で首を吊
った女子学生がいた、という話を聞いた。
- 156 :3:2009/09/27(日) 17:59:13 ID:M8Eyd9CgO
- それは、やっっぱりちょっとヤバイということになって、早速、また弟と重いなあ。
などと文句を言いながら、夏の終わりの夜中、丘の上にある短大への坂道をベンチを
運んで登っていると、もう夜中の2時頃だったというのに、白いワンピースを着た女が
坂道を下って来る。
弟と俺は何となく立ち止まって、ベンチを下ろし、女の方を見てみると、その女は手に
ロープのようなものをぶら下げていた。
それを見た瞬間、俺は弟に「逃げろ!」と叫んで、一目散に坂道を走り、逃げた。
足の速かった弟は、俺を抜かして、もの凄い勢いで逃げて行った。
- 157 :4:2009/09/27(日) 18:01:59 ID:M8Eyd9CgO
- 「待ってくれ~」と言いながら俺も懸命に走った。
が、ころんでしまった。痛てっ、と、起きあがろうとしたが、膝に力が入らない。
ころがるようにしてアスファルトの路面に打ちつけた頭を抱えるようにしながら、
見ちゃだめだと思いつつも、後ろを向くと、カーブしている道路の端の方に置き去
りになっているベンチに、その女は座って、こちらを見ていた。
眼が合ったような気がした。
全てを諦めかけたその時、ふと、どこか聴き覚えのあるメロディが聴こえてきた。
- 158 :5:2009/09/27(日) 18:03:36 ID:M8Eyd9CgO
~Well billy rapped all night about his suicide
How he kick it in the head when he was twenty-five
Speed jive dont want to stay alive. When youre twenty-five~
Mott The hoopleの往年の名曲、"All The Young Dudes"だ。誰かが俺の後ろでこの
懐かしいバラードを口ずさんでいるのだ。
「誰でもいい…助けてくれ!」藁にも縋る想いで振り返った俺の視線のその先に、
寺生まれのTさんはいた。
- 159 :6:2009/09/27(日) 18:07:06 ID:M8Eyd9CgO
- 「And wendys stealing clothes from marks and sparks. And freedys got spots
from ripping off the stars from his face~
って、なにじろじろ見てんだ!夜の散歩中に歌ってたら悪いかよ!
こういう時は見て見ないフリをするのがマナーだろうが!んーっ破ぁっ!!」
どのくらい時間がたっていたのか、俺は弟と母親に起こされた。
俺があまり遅いので、母を起こして、弟が迎えに来てくれたわけだ。
- 160 :8:2009/09/27(日) 18:08:47 ID:M8Eyd9CgO
- うちは母子家庭だったからというわけでもないけど、家族3人、まあ仲がいい方だった
から、母親は文句も言わず、「さあ帰るよ」と言っただけだった。
見るのもイヤだったから、弟にベンチにまだ女は座っているか?と聞くと、弟は
「もう、いない」と言った。
次の日病院に行くと、肘にヒビが入っているということで、ギブスされた。
後頭部にはれがあり、脳震とうを起こしたらしいということで、レントゲンも撮られた。
まあ、そんなことはどうでもイイが、あのベンチは林の裏にあるぼろ寺の境内に、
今でもある。
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- 156 :3:2009/09/27(日) 17:59:13 ID:M8Eyd9CgO
- それは、やっっぱりちょっとヤバイということになって、早速、また弟と重いなあ。
などと文句を言いながら、夏の終わりの夜中、丘の上にある短大への坂道をベンチを
運んで登っていると、もう夜中の2時頃だったというのに、白いワンピースを着た女が
坂道を下って来る。
弟と俺は何となく立ち止まって、ベンチを下ろし、女の方を見てみると、その女は手に
ロープのようなものをぶら下げていた。
それを見た瞬間、俺は弟に「逃げろ!」と叫んで、一目散に坂道を走り、逃げた。
足の速かった弟は、俺を抜かして、もの凄い勢いで逃げて行った。
- 157 :4:2009/09/27(日) 18:01:59 ID:M8Eyd9CgO
- 「待ってくれ~」と言いながら俺も懸命に走った。
が、ころんでしまった。痛てっ、と、起きあがろうとしたが、膝に力が入らない。
ころがるようにしてアスファルトの路面に打ちつけた頭を抱えるようにしながら、
見ちゃだめだと思いつつも、後ろを向くと、カーブしている道路の端の方に置き去
りになっているベンチに、その女は座って、こちらを見ていた。
眼が合ったような気がした。
全てを諦めかけたその時、ふと、どこか聴き覚えのあるメロディが聴こえてきた。
- 158 :5:2009/09/27(日) 18:03:36 ID:M8Eyd9CgO
~Well billy rapped all night about his suicide
How he kick it in the head when he was twenty-five
Speed jive dont want to stay alive. When youre twenty-five~
Mott The hoopleの往年の名曲、"All The Young Dudes"だ。誰かが俺の後ろでこの
懐かしいバラードを口ずさんでいるのだ。
「誰でもいい…助けてくれ!」藁にも縋る想いで振り返った俺の視線のその先に、
寺生まれのTさんはいた。
- 159 :6:2009/09/27(日) 18:07:06 ID:M8Eyd9CgO
- 「And wendys stealing clothes from marks and sparks. And freedys got spots
from ripping off the stars from his face~
って、なにじろじろ見てんだ!夜の散歩中に歌ってたら悪いかよ!
こういう時は見て見ないフリをするのがマナーだろうが!んーっ破ぁっ!!」
どのくらい時間がたっていたのか、俺は弟と母親に起こされた。
俺があまり遅いので、母を起こして、弟が迎えに来てくれたわけだ。
- 160 :8:2009/09/27(日) 18:08:47 ID:M8Eyd9CgO
- うちは母子家庭だったからというわけでもないけど、家族3人、まあ仲がいい方だった
から、母親は文句も言わず、「さあ帰るよ」と言っただけだった。
見るのもイヤだったから、弟にベンチにまだ女は座っているか?と聞くと、弟は
「もう、いない」と言った。
次の日病院に行くと、肘にヒビが入っているということで、ギブスされた。
後頭部にはれがあり、脳震とうを起こしたらしいということで、レントゲンも撮られた。
まあ、そんなことはどうでもイイが、あのベンチは林の裏にあるぼろ寺の境内に、
今でもある。
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