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- 52 :本当にあった怖い名無し:2011/03/08(火) 07:15:45.50 ID:KG1tVcQU0
- 「恋が叶う御守り?」
友美はうん、と頷いてポケットから何やら奇妙な紙切れを取り出した。
彼女に寄れば、それは最近流行りの恋に効く御守りなのだという。
「由梨、知らなかったの? 新しいもの好きだから、もう持ってるかと思った!」
「別に。私オカルトとか興味ないから」
友美の意外そうな声に少しムッとしながら、私はそう言って校舎を出た。
…私にだって気になる相手くらい居る。
ただ、御守りでどうこうなる位生易しい恋では無いことは、私自身良く分かっていた。
健介…。彼には、既に可愛い彼女がいる。
私なんか到底敵わない。そう、神頼みでどうにかなる問題じゃ無いのだ。
「それはどうですかな?」
不意に聞こえた声に足を止めると、何時の間にか私のすぐそばに男の人が立っていた。柔和な面持ち、けれど何処か…怖い。
「私の作るこの札は、貴女の心を反映します。神頼みなどではありません。
思いが強ければ強いほど、それを現世に反映する」
彼はそう言うと、何処から取り出したのか一枚のお札を私に手渡した。
「お代は頂きませんとも。うら若き乙女の恋を手伝うのは、私自身の愉しみでもありますからね」
そう言うと、彼は踵を帰して去って行った。後には私とお札が残される。
「今の…何だったの…?」
私は半信半疑のまま、カバンの中に札をしまい込んだ。
効果は直ぐに現れた。
次の日、健介が私に告白してきたのだ。
何でも前の彼女とは別れたらしい。私の頭の中を、彼から貰ったお札がよぎった。
「勿論!」
私の返事に、健介は極上の笑顔を返してくれた。
それから、健介の元彼女は不登校になったらしい。なんでもいじめに遭ったとか。
その話を聞いて、私は思わず喜んだ。
彼女のせいで長年報われない片思いに苦しんだのだ。今度は彼女が苦しむ番。もっと苦しめばいい。自殺してしまえ。
- 53 :本当にあった怖い名無し:2011/03/08(火) 07:16:58.18 ID:KG1tVcQU0
- 「少しいいかな?」
彼と一緒の帰り道。家の手前で別れて別々に帰る。
家の前に、近所に住む寺生まれで霊感の強いTさんが立っていた。
「君から何かよくないものを感じてね。
心霊スポットや何か謂れのある場所に行かなかったかい?」
「いえ、行ってないですけど…」
この人はダメだ、にげなくちゃ。
私の中の何かが急きたてる。
「じゃ、じゃあこれで…」
「まてっ!」
Tさんが私の肩をつかんだ。
「じゃあ、特殊な札や御守りは?」
心臓が跳ね上がった。あれは私の恋愛を成就させてくれたのだ。渡す訳にはいかない。あれを無くしたら、彼は私の元から去ってしまうかも…。
「思った通りだな。姿を現わせ、悪しき式神め!」
Tさんが叫んだ途端、私の鞄が勝手に開いた。
驚いて取り落としたそこから、黒いもやが吹き出してくる。
「ばれてしまいましたか…。彼女の憎しみはとても心地よかったのですがねえ…」
背後の影から、あの時私に札を渡した男が現れた。
「矢張り貴様か…陰陽師っ!」
Tさんが叫ぶと、男は薄く笑う。
「貴様も腐っても陰陽師なら、何故人を貶めようとする!」
- 54 :本当にあった怖い名無し:2011/03/08(火) 07:17:18.67 ID:KG1tVcQU0
- Tさんの問いに、彼は再び笑った。
「簡単なこと…。人の恨み、憎しみこそがこの世でもっとも強いエネルギーと気付いたからに過ぎぬ。
現にそこのお嬢さんの恨みの力は恋敵を呪いの力で陥れ、私の式神をこんなにも成長させてくれた!」
その言葉と共に、黒いもやがTさんに迫る。
「何をっ…破ぁ!」
「我々陰陽道を生業とする一族は、貴様ら住職一族に地位と居場所を奪われた…。
この恨み、今こそ晴らしてくれようぞ!」
闇の中に男の笑い声が響く。
その声は霧散したもやを再び携えて、暗闇に消えていった。
「大丈夫ですか、Tさん!」
「ああ、それより君は…」
私は俯いた。健介の彼女を不幸の淵に叩き落としたのは、私の醜い心だった…
「私は、どうしたら…」
ぽん、と肩に手が置かれた。
「謝るといい。誠心誠意、心の底から。特殊な力なんか要らない、真心こそが人間の最大の矛であり盾だ」
私の瞳から、ほろほろと涙がこぼれる。
「はい…!」
寺生まれって凄い。改めてそう思いながら私は頷いた。
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- 53 :本当にあった怖い名無し:2011/03/08(火) 07:16:58.18 ID:KG1tVcQU0
- 「少しいいかな?」
彼と一緒の帰り道。家の手前で別れて別々に帰る。
家の前に、近所に住む寺生まれで霊感の強いTさんが立っていた。
「君から何かよくないものを感じてね。
心霊スポットや何か謂れのある場所に行かなかったかい?」
「いえ、行ってないですけど…」
この人はダメだ、にげなくちゃ。
私の中の何かが急きたてる。
「じゃ、じゃあこれで…」
「まてっ!」
Tさんが私の肩をつかんだ。
「じゃあ、特殊な札や御守りは?」
心臓が跳ね上がった。あれは私の恋愛を成就させてくれたのだ。渡す訳にはいかない。あれを無くしたら、彼は私の元から去ってしまうかも…。
「思った通りだな。姿を現わせ、悪しき式神め!」
Tさんが叫んだ途端、私の鞄が勝手に開いた。
驚いて取り落としたそこから、黒いもやが吹き出してくる。
「ばれてしまいましたか…。彼女の憎しみはとても心地よかったのですがねえ…」
背後の影から、あの時私に札を渡した男が現れた。
「矢張り貴様か…陰陽師っ!」
Tさんが叫ぶと、男は薄く笑う。
「貴様も腐っても陰陽師なら、何故人を貶めようとする!」
- 54 :本当にあった怖い名無し:2011/03/08(火) 07:17:18.67 ID:KG1tVcQU0
- Tさんの問いに、彼は再び笑った。
「簡単なこと…。人の恨み、憎しみこそがこの世でもっとも強いエネルギーと気付いたからに過ぎぬ。
現にそこのお嬢さんの恨みの力は恋敵を呪いの力で陥れ、私の式神をこんなにも成長させてくれた!」
その言葉と共に、黒いもやがTさんに迫る。
「何をっ…破ぁ!」
「我々陰陽道を生業とする一族は、貴様ら住職一族に地位と居場所を奪われた…。
この恨み、今こそ晴らしてくれようぞ!」
闇の中に男の笑い声が響く。
その声は霧散したもやを再び携えて、暗闇に消えていった。
「大丈夫ですか、Tさん!」
「ああ、それより君は…」
私は俯いた。健介の彼女を不幸の淵に叩き落としたのは、私の醜い心だった…
「私は、どうしたら…」
ぽん、と肩に手が置かれた。
「謝るといい。誠心誠意、心の底から。特殊な力なんか要らない、真心こそが人間の最大の矛であり盾だ」
私の瞳から、ほろほろと涙がこぼれる。
「はい…!」
寺生まれって凄い。改めてそう思いながら私は頷いた。
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