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- 289 :本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 12:28:05 ID:oRYWyrB00
- ジョバンニは姉と病気の母と、三人で暮らしていました。
父は漁のために北の海に行ったまま消息がわからず、母は病気で家から出られないので
姉とジョバンニは苦しい家計を支えるために、学校に出かける前と帰ってからの朝夕、
毎日のように活版所で活字を拾い、お金を稼ぐ生活をしています。
そのため友だちと遊ぶ時間は無く、学校で勉強が上手くいっていないことや
父が帰ってこないことで、他の子ども達からはよくからかわれていました。
幼なじみのカムパネルラだけは、ジョバンニをからかうことは無かったけれど
仕事が忙しく、もう長い間一緒に遊んでいませんでした。
ある日、母のために牛乳を買いに向かう途中、今日がケンタウル祭りの日である
ことを知ったジョバンニは、カムパネルラを誘って祭りに行こうと思いました。
けれど、街角でばったり会った意地悪な同級生のザネリに辛い言葉を浴びせられ
逃げるようにして町外れの小高い丘に登ったのです。
丘から見える町の灯りは闇の中を、まるで海の底のお宮の景色のようにともり
子ども達の歌う声や口笛、きれぎれの叫び声かすかに聞こえてくるのでした。
しばらく野原の上に寝そべって、遠く星空に思いを馳せていたジョバンニでしたが
ふと気がついてみると、いつの間にか、夜の鉄道の、小さな黄色の電燈のならんだ
車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。
- 290 :本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 12:30:31 ID:oRYWyrB00
-
辺りを見渡すと、ジョバンニのすぐ前の席に、どうも見たことのある子どもが
窓から頭を出して、外を見ているのでした。
それはカムパネルラだったのです。
「ああ、そうだ。僕はカムパネルラと誘い合って旅をしているんだ」
それから、二人で汽車の外から見える天の川の話や汽車の行き先の話をしたていたら、
カムパネルラはポツリと
「誰だって一番善い事をしたら幸いなんだねえ。だから、おっかさんは許して下さると思う」
と言いました。
しばらく汽車が走ると小さな子2人と学生がびしょびしょに濡れながら乗ってきました。
訊けば、氷山にぶつかって沈んだ船に乗っていたと言うのです。
「なんとかして救命ボートにこの子たちを乗せようと思いましたが
ボートまでのところには、まだまだ小さな子ども達や親達がいたのです。
勇気を出して押しのけようかとも思いましたが、そこまでして助けるより
このまま皆で天国に行く方がこの子たちの幸福とも思い、
こうしてこの汽車に乗っているのです」
- 291 :本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 12:32:56 ID:oRYWyrB00
- その後も汽車はどんどん進んでいろいろな人と出会い、別れていきました。
汽車はやがて天上の駅に着き、学生と子ども達も降りていき、遂にはカムパネルラと
ジョバンニの2人だけになりました。
ジョバンニはカムパネルラに
「僕たちは、どこまでもどこまでも一緒に行こうね」と言うと
「ああ、きっと行くよ」とカンパネルラは答えました。
でも次の瞬間、カムパネルラは汽車から居なくなり、ジョバンニは夢から覚めました。
夢から覚めたジョバンニは急いで牛乳を受け取りに行き、その後、カンパネルラが船から落ちた
ザネリを助けた後、行方が分からなくなった事を知りました。
カムパネルラがもうひとりで銀河のはずれまで行ってしまったことを感じたジョバンニは
いろいろなことで胸がいっぱいで何も言えず、河原を駆けだしました。
その時です。
「ぷ破ぁっ!!」
ぐったりしたカムパネルラを担いだ、寺生まれのTさんが夜の水面に顔を出したのです。
Tさんはジョバンニにカムパネルラの身体を預けると、やさしい、チェロのような声で話しかけました。
「今回は運良く助かったけど、本当のお別れってのはいつか必ずやってくるんだ。
終着駅は人それぞれ違う。お前はお前の切符をしっかりと持っておくんだよ」
そう言い終わるやいなや、Tさんはジョバンニの手から牛乳を取ると一息に飲み干し、また河に帰っていきました。
帰ってきたカムパネルラと空になった牛乳瓶を見て、ジョバンニは、何とも言えず
うれしいような悲しいような気がするのでした。
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- 290 :本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 12:30:31 ID:oRYWyrB00
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辺りを見渡すと、ジョバンニのすぐ前の席に、どうも見たことのある子どもが
窓から頭を出して、外を見ているのでした。
それはカムパネルラだったのです。
「ああ、そうだ。僕はカムパネルラと誘い合って旅をしているんだ」
それから、二人で汽車の外から見える天の川の話や汽車の行き先の話をしたていたら、
カムパネルラはポツリと
「誰だって一番善い事をしたら幸いなんだねえ。だから、おっかさんは許して下さると思う」
と言いました。
しばらく汽車が走ると小さな子2人と学生がびしょびしょに濡れながら乗ってきました。
訊けば、氷山にぶつかって沈んだ船に乗っていたと言うのです。
「なんとかして救命ボートにこの子たちを乗せようと思いましたが
ボートまでのところには、まだまだ小さな子ども達や親達がいたのです。
勇気を出して押しのけようかとも思いましたが、そこまでして助けるより
このまま皆で天国に行く方がこの子たちの幸福とも思い、
こうしてこの汽車に乗っているのです」
- 291 :本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 12:32:56 ID:oRYWyrB00
- その後も汽車はどんどん進んでいろいろな人と出会い、別れていきました。
汽車はやがて天上の駅に着き、学生と子ども達も降りていき、遂にはカムパネルラと
ジョバンニの2人だけになりました。
ジョバンニはカムパネルラに
「僕たちは、どこまでもどこまでも一緒に行こうね」と言うと
「ああ、きっと行くよ」とカンパネルラは答えました。
でも次の瞬間、カムパネルラは汽車から居なくなり、ジョバンニは夢から覚めました。
夢から覚めたジョバンニは急いで牛乳を受け取りに行き、その後、カンパネルラが船から落ちた
ザネリを助けた後、行方が分からなくなった事を知りました。
カムパネルラがもうひとりで銀河のはずれまで行ってしまったことを感じたジョバンニは
いろいろなことで胸がいっぱいで何も言えず、河原を駆けだしました。
その時です。
「ぷ破ぁっ!!」
ぐったりしたカムパネルラを担いだ、寺生まれのTさんが夜の水面に顔を出したのです。
Tさんはジョバンニにカムパネルラの身体を預けると、やさしい、チェロのような声で話しかけました。
「今回は運良く助かったけど、本当のお別れってのはいつか必ずやってくるんだ。
終着駅は人それぞれ違う。お前はお前の切符をしっかりと持っておくんだよ」
そう言い終わるやいなや、Tさんはジョバンニの手から牛乳を取ると一息に飲み干し、また河に帰っていきました。
帰ってきたカムパネルラと空になった牛乳瓶を見て、ジョバンニは、何とも言えず
うれしいような悲しいような気がするのでした。
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