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- 435 :本当にあった怖い名無し:2012/04/18(水) 21:22:16.60 ID:qh43zna00
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俺は数年前脱サラし、とうとう自分の牧場を開くことに成功した。
早起きにもなれ、経営も安定してきた。
そんなとき、奇妙な事件が起こった。朝いつものようにヤギ小屋に行くとヤギが死んでいるのだ。今日で丁度5日目だ。20匹いたヤギが10匹まで減っていた。それも全身から血を抜かれているようだった。
周りに山しかないこの場所、人はあまり来ないはずだ。すると何か動物の仕業か?と初めは考えていたがヤギより襲いやすい鶏が被害に合わないのはおかしいと思った。
数回続いたこの事件も怖くなったので俺は開業祝いに来てくれていた元先輩の寺生まれのTさんに相談した。
「そりゃあ野衾かもしれないな。よっしゃ!任せろ!」
そして、待ち伏せを始めて深夜になった。
2時を過ぎたあたりに、ガタン!と大きな音がし、入り口の扉が空いた。
そこには1.5mくらいの全身を毛で覆った何かがいた。
全身を毛で覆った何かはヤギを見つけると、カンガルーのように飛び跳ね襲いかかっ「破ァ!」
ヤギに襲いかかる直前、Tさんが手から出した光弾が奴をぶっ飛ばした。
懐中電灯を手に恐る恐る近づき、光を全身毛に覆われた何かに向けると、吹っ飛ばされたのはチュパカブラだった。
UMAまで倒してしまうとは寺生まれってすごい。突然現れた黒服2人組がペンのようなものから出した光を見ながら俺はそう思っ……
あれ?何でヤギ小屋にいるんだっけ?
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- 411 :本当にあった怖い名無し:2012/02/29(水) 00:58:28.47 ID:f1pNuO9D0
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「アリガトーーーーーーーー!!」
ノドからCD音源と讃えられる、世界一可愛い声優の、ロリータヴォイスがライブ会場に響きわたる。
そしてMCの合間にバースデーケーキがステージ上に運びこまれた。
彼女に相応しくピンクを基調としながら、色とりどりのフルーツやチョコレートが散りばめらた
豪華でありながら、可愛らしいケーキだった。
そう、今日は彼女のバースデーライブなのだ。
しかし、チャッカマンを持つスタッフがあきらかに狼狽している。
なぜならロウソクが36本たっていたのだ…
会場を埋め尽くしたファンも次第に状況を理解し青ざめていったその時。
- 412 :本当にあった怖い名無し:2012/02/29(水) 00:59:19.24 ID:f1pNuO9D0
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「破ぁーーーーピ、バースデー、トゥーユー!!!」
あれは寺生まれで霊感の強いTさんだ。
ピンクのサイリウムが、青白く色を変えたのを見て確信した。
「盲目的な王国民にとっては、真実も悪霊みたいなモノなのか」
ケーキのロウソクは17本を残し消えていた。
こうしてライブは彼女にとっても、集まったファンにとっても幸せなひと時となった。
会場をあとにする、Tさんのピンクのハッピの背中を見て
寺生まれって本当に何処にでもあらわれる。
あらためてそう思った。
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- 394 :本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 08:37:59.69 ID:xCKfBzsY0
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老警「で、あと一人まだ中にいるんだな?」
初老の警官の足元にすがるようにしていた少年たちが、無言で震えながら頷いている。
若警「んじゃ先輩、自分が中探してきますよ、こいつら運ぶのに応援呼んどいてください」
とある廃病院の敷地前の空き地――深夜の警官2名と10人弱の少年たち。
老警「すまんな“木念”くん、本官はここでこいつらとパトカー待つから、中で気絶してるバカ頼むよ」
(やれやれ、厄介なことにならなきゃいいんだけど…)
懐中電灯片手に“木念”こと例の寺生まれのお巡りさんは廃病院の禁断のエリアに向かう。
通報を受けて交番から駆けつけてみれば、近隣の高校生たちが肝試しに入ったものの、
不気味な現象に遭遇して一人が暴走、
残りの全員は恐怖に震えながらかろうじて逃げ出してきたという。
先輩の警官は当然知らないだろうが、じつはこの廃病院は笑い事では済まないガチスポット。
いままでネットに上がっていたのはガキどもでも入れるお子様エリアの情報だけだったのに、
かつてバリケードと呪物で必死に封印したエリアに、ガキどもは入り込んでしまったらしい。
(ここ数年危険な兆候もなかったのに…それになぜこんな寒い時期に…)
- 395 :本当にあった怖い名無し:2012/01/15(日) 08:46:23.11 ID:xCKfBzsY0
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結界の残骸を前に、かび臭い中、お巡りさんは立ち止まる。
(む…中は…一人じゃない…! なんだこの妙な熱気は!? 封した邪のほかに何か?)
闇に同化して気配を殺し、お巡りさんが慎重に進んでいくと、突如闇から声が響いた。
「破ァアアアア!」
なにか熱く弾ける硬質なものが列になって飛んできた。
警「おや、また会ったね。そのとなりで伸びてるバカ面が肝試しの子どもかい?」
T 「チ! 気配殺して入って来やがるから誤爆しちまったよ…あれ、まさかここ…」
警「さすがに察しがいいね。3年前の事件のあと、入り口塞いだのは僕なんだ」
T 「もっと慎重に塞いで…っておいアンタ! 俺のアレまともに食らったのか!?」
警「キミはどうやら僕とは違う特性みたいだね…ハハ、いい腕…してるよ」
T 「なぜ避けるか返すかしなかった…ああ! いつの間に!?」
青年が振り返ると、さっきまでなかった名状しがたい臭気を残す砂粒の小山ができていた。
同時に、この場を占めていた邪悪な負の雰囲気は解消された。
警「僕は仕事柄こういう順序で動くわけ…悪いがそのバカ…僕の背中に負ぶわせてくれないか…」
T 「アンタ大丈夫か! おい!」
警「外にはパトカーと救急車が来てる…キミはココ封印したらひとまず逃げてくれ…頼む…」
T 「承知、いちおうこのガキのは祓っといた。外のガキどもの口封じは任せたぜ、あとアンタには医者な」
警「くっ…これ病院行っても…かえって不審でしょ、ハハ…」
T 「じゃなくて、そっちの医者だ! 腕の立つ爺さんがいるから話つけておく」
警「所轄区域にそんな人いなかったけど…あんまり遠くに出かけたくない症状なんでね…」
T 「心配すんな、向こうから勝手に来てくれる。さっさと行けよ!」
警「じゃ…あとヨロシク…痛え…ハハハ」
T 「済まなかったな。アバヨ!」
警・T 『あーあ、思ったとおり厄介なことになっちまったなあ…』
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- 107 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 00:29:02.26 ID:SSTCjchf0
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僕の母方の家はいわゆる「憑きもの筋」だそうです。
そうした場合はたいてい犬とか蛇とか猿らしいのですが、母の家は「ヘイシ様」というそうです。
読んだとおり、平氏の落ち武者のことです。
なんでも先祖のところへ平氏の武将が逃れて来た際、その武将を騙して殺し、源氏方に首を差し出したそうです。
その時の恩賞で土地をたくさんもらったので、その地域で並ぶもののない富豪になったんだとか。
でもやはりその時の武将の怨霊が祟りを次々と起こして、一族が全滅しかけたんだそうです。
それで必死に許しを請い、祠を建てて祀ったところ
「一代経るごとに、最初の子供の命を貰う」ということで、祟りは治まったそうです。
つまり、一族で最初の子供、最初の孫、最初のひ孫……という風に
母の代では、一番上の姉が死産だったそうで、僕の代も母の一番上のお兄さんの子供が生まれてすぐ亡くなりました。
そして昨年五月、僕達の次の代になる子供が生まれることになりました。
- 108 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 00:32:21.41 ID:SSTCjchf0
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ヨーヘイ(仮名)君は母の二番目のお兄さんの子供で、次男だったせいかけっこう好き勝手に生きてました。
一言で言えばDQNなんですが、僕は小さいころから仲が良かったです。
で、そのヨーヘイ君が同じDQNのJK――ナツミ(仮名)ちゃんを孕ませちゃったんで、
一族全員から「ある程度大きくなったら堕ろせよ」と強制されました。
過去に堕胎でもOKだったらしく、これで次の代のはクリアできる、とみんな少し嬉しそうでした。
ヨーヘイ君もナツミちゃんもまだ10代だし、DQN同士で出来ちゃった子だから、いなくなってもいいや、みたいな雰囲気でした。
僕はそんな空気に腹が立ってたんですが、父親のヨーヘイ君はもっとムカついてて
「ぜってー堕ろさねーし! 堕ろせって言った奴、ぶっ殺すし!」とキレまくって、
散々伯父さん達相手に暴れまくった挙句、大阪の僕のアパートに転がり込んできたんです。
「ケイちゃん(僕)、この子が生まれるまではここに居させてくれ。このままだとあいつらに殺されるわ」
親戚一同の態度が気に入らなかった僕は、すぐOKしました。
僕は祟りを信じていなかったし、仮に祟りが本当でも、遠く離れた大阪までは来ないだろう、と思っていたからです。
それでも念のため、寺生まれのTさんに相談することにしました。
- 109 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 01:02:51.62 ID:SSTCjchf0
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「なるほど、そいつは厄介だ」
僕の話を聞いたTさんはいつもの余裕ある態度ではありませんでした。
目を閉じて腕を組み、深く息をつきながら、カフェのソファーに背を凭れて、じっと考え込んでいました。
「悪霊ってのは怨念の深さと、恨み続けた長さがその霊力の強さになる。
そのヘイシ様ってのは1000年近くお前の家を恨み続けてるわけだから、その力は相当なもんだ。
おまけに何代にも渡って赤子の贄を出してきたから、益々強くなってるはずだ」
「じゃあ、Tさんでも無理なんですか?」
「わからない。こればかりは安心だと言えない。だが……」
目を開けたTさんの眼差しは、使命感と闘志で満ち溢れていた。
「赤ん坊の命がかかってるんじゃ、断れないだろ?」
Tさんは立ち上がると、俺の肩を叩いてそう笑ったのです。
そしてナツミちゃんの出産予定日が来ました。
無事、女の子に生まれ元気な泣き声が病室いっぱいに広がります。
ヨーヘイ君は赤ちゃんの小さな手を握って、「パパだよ、俺がパパだよ」と涙を流して話しかけていました。
「あいつもあんな父親の顔をするんだ」と僕は、彼の見せた一面に驚き、そして感動したのでした。
そんな幸せいっぱいの空間の中で、Tさんだけは重苦しい表情で周囲に気を配っていました。
そんなに気を張らなくても何も起こらないですよ、と僕がいいかけた時、
- 110 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 01:08:22.59 ID:SSTCjchf0
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シャン
どこからともなく鈴の音が聞こえてきました。
同時に病院中の電気が消え、病室は真っ暗闇になったのです。
お医者さんや看護師さん達が何事か、とざわめき出し、ヨーヘイ君達夫婦は固唾を飲んで身を寄せ合いました。
「やれやれ……どうやらもうおでましのようだな」
廊下に目をやるTさん。シャン、シャン、シャン、シャン、と鈴の音が廊下からどんどん近づいてきます。
そして病室のドアの前で止まりました。
耳が痛いくらいの静寂でした。廊下からは何も物音はしません。僕らも何も言わず、ただただ黙ってドアを見つめていました。
病室にいる皆が、ドアの向こうに何かが――それも危険な存在がいることを直感的に理解していました。
一分か二分、あるいはもっと短かったかもしれません。しばしの静寂の後、ドアが激しく叩かれたのです。
ドンドン、ドンドン
殴りつけるような感じでドアが撓むのがわかりました。
ドアの中央に貼られた呪符の効果か、ヘイシ様は入ってこれないようです。
「だが、それも時間の問題だ」
Tさんが指摘するとおり、確かにドアが叩かれるたび、鬼火のようなもので少しずつ呪符が焼け焦げて行くのが見えました。
ヘイシ様の力に耐えられなくなっているのです。
「こいつでなんとか決められればいいが」
Tさんは腰を落とし、両手を前に突き出して構えました。
青白い光が集まって膨れ上がり、巨大な光弾が出現しました。
入ってきた瞬間、最大の力を撃ち出す作戦のようです。
ドンドン、ドン、ドグシャ!
ついに呪符が完全に焼け落ちて、ドアが天井にまで吹き飛ばされました。
その瞬間、
「破ァああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
Tさんの必殺の一撃が放たれました。
- 111 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 01:15:35.07 ID:SSTCjchf0
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「うぎゃああああああっ!!!」
光弾が命中し、断末魔の叫びが響き渡ります。
「やった!」
僕はTさんがヘイシ様を倒したと思ってガッツポーズをしました。
「違う! よく見ろ! あれは囮だったんだ」
見ると、光弾を食らったのは中年の医師でした。壁にめり込み、完全に気絶しています。
「それじゃ、ヘイシ様は……」
「もうすでに病室のな、ぐはっ!」
Tさんの身体が凄い勢いで横に流れ、窓に激突しました。
「ああっ! Tさん!?」
窓枠ごと外に吹き飛ばされたTさんは、今の一撃で気を失ったのかそのまま地面に落下してしまったのです。
「そんな、Tさんがやられるなんて……」
僕は絶望的な気持ちでいっぱいでした。だってTさんがやられてしまったら、もう誰もヘイシ様を止めることができないのです。
「ちくしょー! やらせねーぞ! 娘は俺が守るんだ!」
見えない敵に向かってヨーヘイ君は叫びましたが、すぐその声は途絶えました。
ヨーヘイ君の首にくっきり浮かんだ手形がギリギリと喉を締めつけ、声を封じてしまったからです。
もう病室内は大パニックです。
医者も看護師も皆逃げ出そうとしましたが、病室の入り口に見えない壁のような障壁ができていて、
そこから抜け出すことはできませんでした。
そしてナツミちゃんの抱いた赤ちゃんが、引っ手繰られるように中に浮かび上がりあがりました。
見えました。はっきりとヘイシ様の姿が見えました。
血まみれの落ち武者が憎悪と凶器に歪んだ表情で刀を振り上げていました。
もうダメだ、と僕は赤ちゃんの死を覚悟しました。
- 112 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 01:27:31.18 ID:SSTCjchf0
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「……させ……るかよ」
それは最初、死者の呻き声のようでした。
息も絶え絶えな低く重苦しい響き。
ですが確かに聞き覚えのあるその声は寺生まれのTさんのものでした。
「……その赤ちゃんは必ず守る」
ボロボロになったTさんが這いずるように、落ちた窓から現れたのです。
「くそっ、倒そうと思っちゃダメなんだ。こいつを相手にするにはわからせなきゃダメなんだ」
Tさんはヨーヘイ君の手を掴むと自分の手と重ねるようにして、ヘイシ様に向けました。
「これが今、お前が復讐しようとしている相手だ! 破ァ!!」
なんと信じられないことに、ヨーヘイ君の手から青白い光弾が放たれました。
ですがそれはTさんのものよりも輝きは小さく、勢いも弱弱しい頼りないものでした。
あんなものでヘイシ様を倒すことなんてできるわけがない。そう僕は思いました。
ですが、その光弾がヘイシ様に触れた瞬間、ヘイシ様の周囲を包み込むように粒子が拡がったのです。
イルミネーションのような淡い輝きの中、不思議とヘイシ様は動きを止めました。
禍々しい気配が次第に薄れ、表情もどこか穏やかなものになっていくのがわかりました。
「わかってくれたか。こいつは、いや、こいつらはもうお前の恨むような相手じゃないんだよ」
Tさんがそう語りかけると、ヘイシ様はゆっくりと頷いて、姿を消しました。
後にはメチャクチャになった病室と、何事もなかったかのようにすやすやと眠る赤ちゃんが残されました。
- 113 :本当にあった怖い名無し:2011/03/22(火) 01:39:20.60 ID:SSTCjchf0
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「なんでヘイシ様はあそこで退散したのでしょうか」
僕の質問にTさんは紫煙をくゆらせた。
「ヘイシ様は気づいたんだよ。赤子の贄を要求することの虚しさを」
「それはいったい……」
「ヨーヘイ君の赤ちゃんを思う気持ち、これからの父親として生きる覚悟、そして思い描くありふれた幸せの姿
そうしたものを光弾に込めてヘイシ様に伝えたんだ。貴方が奪おうとしているのは、悪人の命じゃない
どこにでもいるただの人間の未来なんだ、と」
「そんなことで恨みが晴れるんですか?」
「晴れたんじゃないさ。ただ千年近くも恨み続けてたら、恨むことに疲れちまうだろ?
だからもう恨まなくてもいいんだ、と少し肩の荷を下してやったんだ」
そしてTさんは最後にこう言った。
「何より、子供を守ろうとする父親の姿を見て、武士として何も思わないのか、って言ったのが効いたみたいだな」
あの時の必死なヨーヘイ君の姿を思い出しているのか、遠い目をしたTさんを見て
寺生まれってけっこう深いんだな、と思うと同時にヨーヘイ君達の幸せな未来を祈った。
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- 10 :本当にあった怖い名無し:2010/12/09(木) 11:45:10 ID:Gk4uS10+0
- 敵地、西京極スタジアムで迎えた京都戦
既に降格が決まっている京都相手に2失点、攻撃陣も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「来年はJ2か」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年のJリーグベストイレブン、石川直宏は独りベンチで泣いていた
ナビスコ杯で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今のFC東京で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」石川は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、石川ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」石川は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、石川はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した石川が目にしたのは、バックスタンドまで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにLA EDOGAWAが響いていた
どういうことか分からずに呆然とする石川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ナオ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った石川は目を疑った
「ど・・・土肥さん?」 「なんだナオ、居眠りでもしてたのか?」
「み・・・三浦コーチ?」 「ナンダ石川、カッテニ三浦サンヲ引退サセヤガッテ」
「ルーカスさん・・・」 石川は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
FW:戸田、ルーカス MF:ケリー、三浦、今野、石川 DF:金沢、ジャーン、茂庭、加地 GK:土肥
暫時、唖然としていた石川だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
今野からユニフォームを受け取り、グラウンドへ全力疾走する石川、
- 11 :本当にあった怖い名無し:2010/12/09(木) 11:46:25 ID:Gk4uS10+0
- 「そこまでだ!」
突然、客席から飛び込んできた男に石川は見覚えがあった。寺生まれで霊感の強いTさんだった。
「Tさん!? なんでこんなところに」
「やれやれ危ないところだったぜ。こいつらはお前のチームメイトじゃない。
ナビスコの悪霊だ! 幻覚を見せてお前を取り込もうとしているんだ!」
Tさんの言葉が終わるか終らぬかのウチに、選手や観客達の顔は恐ろしい化け物へと変化していく。
そしてTさん目掛けて一斉に襲い掛かった。
だが、Tさんは華麗なドリブルで彼らを一人ずつ抜き去っていく。
緩急自在のドリブルに悪霊たちは翻弄されるばかりで、触れることすらできない。
「ボールは友達! 破ぁ――ッッ!!」
ついにゴール前でフリーになったTさんが土肥目掛けてシュートを放つと
ボールが青白い光弾へと変わり、土肥を貫いてネットへと突き刺さった。
眩い輝きに石川が目を瞑った次の瞬間、試合終了のホイッスルが響き渡る。
恐る恐る石川が目を開けると、そこにはガランとした無人のスタジアムが拡がるのみだった。
「危なかったな。このまま飲み込まれていたら、J2という現実を受け入れられず来期の昇格がなくなるところだった」
紫煙を燻らせながらロッカールーム闇に消えてゆくその背中をみて、石川は、
寺生まれってスゴイとその時改めて思うと共に、来期は絶対昇格してみせると誓うのだった。
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