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子供の頃、留守番してて、ジュースこぼしてしまった。
それをティッシュで拭いてたら丁度無くなって、何気に空の箱を覗いてみた。
なんと外灯に照らされた夜道が見えた。
風が箱から吹き上げてくるほど強かった。
ためしに4本指を入れてみると、ちゃんと風の感触がした。
なんじゃこりゃおもしれー、と一人はしゃいでいたとき、突っ込んでいた指にべちゃっという感触が走った。
慌てて指を引き抜いた。緑色のスライムみたいなのが手にくっついてた。
謎の物体の中は透けていて、目玉みたいなのもあったような気がする。
情けない声を上げながら洗面所で洗い流した。
もう片方の手でそれを握り潰しながら、30分ぐらい洗い続けた。
洗い終えた後ちょっと落ち着いてきて、恐る恐るさっきのティッシュの箱を見たが、もう何も見えなかった。
もちろん両親に話したけれど信じてはくれず、でも右手は火傷したみたいに水ぶくれが出来ていた。
包帯をして、もやもやした気持ちを抱えたままその日は寝た。
数年後学校から帰るとき、家の近くの溝で蠢いている物を見つけた。
近付くと、いつかのスライムの欠片のような物。
小さくなっていたが、必死に進もうとしていた。
俺はどうしようか一瞬迷ったが、それを踏み潰した…
グチャグチャになったスライムが、ぴくぴくと動いていた。
なんだか、こっちを見ている気がした。
「破ぁ!!」
突然近くの草むらから青白い光弾が飛び出し、スライムの残骸を消し飛ばした。
「・・・ありがとよ。坊主。助かったぜ」
声が聞こえた草むらを覗き込むと、寺生まれで霊感の強いTさんが血だらけで横たわっていた。
「アレを潰してくれなかったら・・・俺は死んでいたよ。
いつか・・・お前がティッシュ箱の怪物を殺した時から、俺はお前に目を付けていたんだ」
Tさんは膝を起こすと、血だらけの袈裟を引きずりながら
「こりゃ当分禁煙禁酒だな」と笑って路地裏の闇に消えていった。
謎の世界と謎の生物。寺生まれって奥が深い。子供ながらにそう思った。