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寺生まれのTさんまとめ@オカ板
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211 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:40:03 ID:lJuaYHFz0
ヨーロッパのとある国に留学してた時の話を

留学したてで言葉もままなら無い頃、よく日本人の友達を家に呼んで飲んでたんだ。
俺の家は、屋根裏で大き目の丸窓から地下鉄の出口が見える。
エスカレーターがだけでモロに出口専用なのだが、怖いのはたまに夜中過ぎに意味も
なく動き始めること。
夜中なもんだから車どおりもなく、音が良く響いて「ブーン」ってなるんだがこれが
怖い。たまに丸窓から覗いて確かめるんだがこれが誰もいない。
まぁそんなことがたまに起こる程度だった。

ところがある週末、いつものように友達を呼んで飲もうと思い、一番仲の良い画学生
に連絡をした。今ちょうど別の友達と飲んでたらしく、家に来るとのこと。

一時間ほどして、そいつが来たわけだが連れはなんと可愛い女の子。
俺は「羨ましい」と思ったのを良く覚えている。

で、その3人で飲み始め芸術や最近のこの町のことを語ったりしてた。
(俺は美術史の学生だった)

12時を過ぎ終電が無くなり、治安もあまり良くない場所なのでいつものように
「泊まってけ」と言ってまた再び飲みだした。
丸窓の傍でタバコを吸っている俺の友達が「エスカレーター動いてるぜ」と。
時計を見たら2時過ぎ。「またか」と思い「たまにあんだよ」と説明した。

すると連れの女の子が興味をもったらしく「どれどれ」とその丸窓を覗いて
「本当だ」となんだかはしゃいでいた。

俺は俺で酒を飲みながら「独りでそれがあると怖い」だのと、
あーでもない、こーでもないと話していた。実はその娘のことが気に入りだしてた
わけだが。
212 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:42:51 ID:lJuaYHFz0
しばらく覗いている彼女がふと「誰かいるよ。」と言って俺を呼んだ。
「まさかぁ。」酔っ払いかなんかだろうと隣から覗くと誰もいない。
「いないじゃん」そういって彼女を見ると「いないねぇ」と俺の友達も
「誰もいるわけ無い」と言ってタバコをふかしていた。
俺はトイレに行き、友達はタバコを吸い終わり部屋で飲み始めた。
ところがずーっと覗いている彼女が、いきなり「あっ!」と小さく叫んだから
二人ともびっくりして「どうしたん?」と聞くと、

「二人出てきたよ。お母さんと子供かな」

「んな馬鹿な」と思い、覗いてみるがやっぱりいない。
「いねーじゃんか」「そういう冗談好きなのか?」「こえーから止めてくれ」
だの散々愚痴った挙句、俺は眠くなったのでそのまま寝てしまった。

翌朝(むしろ昼近くだった)起きると、俺の友達は眠りこけてたが、
彼女がいない。まぁ始発か朝方にでも帰ったのだろうと思い、
気にはかけなかった。が、別の意味で気にはなってたのでその夜電話した。

電話して昨日どうしたのか聞いてみると「寝れなかったから朝方早めに帰った」
とのこと。やっぱそうかぃと思い、どうでもいいような事を一通り話し、
なんとなく今度二人で遊ぼうと約束した。
電話を切ろうとした時、「エスカレーターさ」と話してきた。
なんであんなエスカレーターの話を引っ張るのか?その時は
不思議で仕方なかったが「今日も動くかもなぁ」と冗談交じりで話すと
「今度動いてもあまり覗かないほうがいいよ、見付かるよ」と
彼女が低い声で言った。あまりに低い声で言うものだったから、
その時は「マジで俺はびびりだから、そういうのは止めてくれ」と
ちょっと本気で頼んだことを覚えている。

で、それから3日後、二人で会うことになり、その日は彼女の家に
お邪魔した。俺は料理が出来るので(彼女が料理がまったく出来ない)
俺が夕食を用意して二人で乾杯をした。

213 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:48:22 ID:lJuaYHFz0
それ以来、俺は彼女と付き合うようになった。
友達は偉く無関心で「あっそ、おめでと」ぐらいしか言わず
それからもよく家に来て飲んでたのを覚えている。

ところが、その交際もあまり続かなかった。
付き合い始めたのが、1月か2月だったから、半年程度。
理由はいきなり彼女が日本に帰国したからだ。

帰る間際には相当痩せこけていたのを覚えている、その時は
「やっぱり俺がいても寂しかったのかなぁ」などと
俺を捨てて帰国した理由を考えていた。
帰国前の二週間ほどは殆ど会ってもらえなかった。
おかげで別れもろくに言えず、今も少し引きずっている。

ただ余りに逃げるように帰ったので、俺は相当荒れた。
まぁその画学生の友達と「女なんかどうでもいい」だの
「あんな身勝手な奴だと思わなかった」だの愚痴りまくっていた。
友達は殆どうなずくだけであまり何も言わなかったのを覚えている。

それから半年して、ちょうど一昨年の今頃、
それから別の国のアート学校にさらに留学したその友人からメールが来た。

「彼女が入院した。」

なんでも怪我とかじゃなくて精神的なものらしい。
たしかに付き合ってた頃も結構不思議な子で、金縛りや、独り言は
日常茶飯事で、年中うなされたりひどいと叫んだりしてたのは覚えていた。

ただそこまで酷いとは思っていなかったのでかなりショックを受けた。
その時は日本に帰って様子だけでも見に行くべきかと思ったが、
悲しいもので、学校の単位的にも金銭的にも日本に帰ることは
出来なかった。

214 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:50:52 ID:lJuaYHFz0
それから半年して、夏休みに一時帰国することがあったので、
そのついでに彼女の実家の広島まで行ってみた。
(俺は東京なので、交通費がかなりきつかった。)

住所を頼りに実家を訪問した。どうも様子がおかしいなと
彼女の実家の前で思ったことを覚えている。と言うのも、
なんて説明したらいいか分からんが、なんか色がくすんでた気がした。

インターホンを鳴らすと、彼女の母親が出てきた。
俺を一目見ると、「あなた、○○さん!」と、ほぼ叫んでた。
いきなり叫ばれたのでびびったが、やっぱりその時も変だと思った。

家に入れてもらい居間に通され、彼女の容態を聞こうと思ったとき、
愕然とした。

仏壇に彼女の大きな写真が、そして線香が焚かれていた。
俺はマジで混乱して、どういうことか把握できなかったから
「どうしたんですか!」と叫んだ、叫んですぐさま思ったのは、

「自殺したんだろう」

案の定、入院先から逃げ出してとある雑居ビルから飛び降りたらしい。
その時のことは、正直俺も記憶が今でもあやふやだ。ショックだったし
なにより、やり直すつもりでそれなりの覚悟をしてたからだ。

理由を彼女の母親に尋ねるも、病院に入院していたこともあり、
精神的なものだとしか聞かされなかった。

結局、日も限られていて、墓参りをした次の日には東京に戻り、
その一週間後にはまた自分の留学先に戻った。
留学先の自分の屋根裏のアパートに戻ると、手紙が届いていた。
なんと彼女からだった。正直、生まれて一番びびったかもしれない。

215 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:52:34 ID:lJuaYHFz0
封筒を開けると、酷いものだった。錯乱していた。辛うじて内容は
つかめたが、本当に荒れた字だった。

わたしはしぬ。あれからずっとおいまわされてる。
げんじつにもゆめにもずっと、あのおとと、あのふたりがついてくる。

読める範囲で理解できた言葉はそれだけだった。ただ、デッサンが同封
されており、なんてことは無い俺のアパートの丸窓だった。

俺はあまり泣かないほうだが、この時ばかりは泣いた。
15年ほど前にオヤジが死んだときも泣いたが、それ以上に泣いた。

それを機に、急遽帰国して今に至るわけだが。
帰国する前に、他国へ留学した画学生の国に遊びに行った。

相変わらず飄々としていたが、起こったことをすべて話すと
「黙っていたことがある」といって語り始めた。

なんでも彼女が、俺の家に初めて来て以来、ずっと変な親子に付きまとわ
れていたと言うこと。
なんとなくは予想していたが、当時は、本当にそんなことがあるとは思いも
しなかった。思えば、付き合った半年、後にも先にも彼女はその一度しか家
に泊まっていなかった。

俺にそれを黙っていたのは彼女の思いやりらしく、その画学生の友人も
約束を守り続けていたらしい。

216 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:53:25 ID:lJuaYHFz0
そしてそれを聞かされあと、俺は留学を取りやめ帰国することを打ち明けた。

すると、「実はもう一つ黙っていたことがある」といい

「その親子の霊は、俺がさっさと祓ってやったんだよ」

そう続けた。「言ってなかったっけな?俺の実家寺なんだ」
そうも言った。いきなり言われたもんだから、信じれなかったが
「そしたら彼女にすごい感謝されちゃってさ」
「それ以来、お前に内緒でちょくちょく会ってたんだ」
「と言うか、ぶっちゃっけ付きあってた・・・でも」

そう言うと、いきなり怖い顔して俺にこう言った
「心までは救えなかったんだ」

帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、飛行機のチケットを手配し、
逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、
帰る前に、彼女との思い出の場所やらなんやらを一通り巡った。

その国での最後の夜に、ちょうど2時過ぎ頃、彼女が丸窓を覗いた頃、

エスカレーターがブーンと鳴り始めた。

俺は覗いた。しかもずっとそのエスカレーターが止まるまで見続けた。

そこには悲しげな眼でこちらを見つめる、彼女がいた。

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212 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:42:51 ID:lJuaYHFz0
しばらく覗いている彼女がふと「誰かいるよ。」と言って俺を呼んだ。
「まさかぁ。」酔っ払いかなんかだろうと隣から覗くと誰もいない。
「いないじゃん」そういって彼女を見ると「いないねぇ」と俺の友達も
「誰もいるわけ無い」と言ってタバコをふかしていた。
俺はトイレに行き、友達はタバコを吸い終わり部屋で飲み始めた。
ところがずーっと覗いている彼女が、いきなり「あっ!」と小さく叫んだから
二人ともびっくりして「どうしたん?」と聞くと、

「二人出てきたよ。お母さんと子供かな」

「んな馬鹿な」と思い、覗いてみるがやっぱりいない。
「いねーじゃんか」「そういう冗談好きなのか?」「こえーから止めてくれ」
だの散々愚痴った挙句、俺は眠くなったのでそのまま寝てしまった。

翌朝(むしろ昼近くだった)起きると、俺の友達は眠りこけてたが、
彼女がいない。まぁ始発か朝方にでも帰ったのだろうと思い、
気にはかけなかった。が、別の意味で気にはなってたのでその夜電話した。

電話して昨日どうしたのか聞いてみると「寝れなかったから朝方早めに帰った」
とのこと。やっぱそうかぃと思い、どうでもいいような事を一通り話し、
なんとなく今度二人で遊ぼうと約束した。
電話を切ろうとした時、「エスカレーターさ」と話してきた。
なんであんなエスカレーターの話を引っ張るのか?その時は
不思議で仕方なかったが「今日も動くかもなぁ」と冗談交じりで話すと
「今度動いてもあまり覗かないほうがいいよ、見付かるよ」と
彼女が低い声で言った。あまりに低い声で言うものだったから、
その時は「マジで俺はびびりだから、そういうのは止めてくれ」と
ちょっと本気で頼んだことを覚えている。

で、それから3日後、二人で会うことになり、その日は彼女の家に
お邪魔した。俺は料理が出来るので(彼女が料理がまったく出来ない)
俺が夕食を用意して二人で乾杯をした。

213 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:48:22 ID:lJuaYHFz0
それ以来、俺は彼女と付き合うようになった。
友達は偉く無関心で「あっそ、おめでと」ぐらいしか言わず
それからもよく家に来て飲んでたのを覚えている。

ところが、その交際もあまり続かなかった。
付き合い始めたのが、1月か2月だったから、半年程度。
理由はいきなり彼女が日本に帰国したからだ。

帰る間際には相当痩せこけていたのを覚えている、その時は
「やっぱり俺がいても寂しかったのかなぁ」などと
俺を捨てて帰国した理由を考えていた。
帰国前の二週間ほどは殆ど会ってもらえなかった。
おかげで別れもろくに言えず、今も少し引きずっている。

ただ余りに逃げるように帰ったので、俺は相当荒れた。
まぁその画学生の友達と「女なんかどうでもいい」だの
「あんな身勝手な奴だと思わなかった」だの愚痴りまくっていた。
友達は殆どうなずくだけであまり何も言わなかったのを覚えている。

それから半年して、ちょうど一昨年の今頃、
それから別の国のアート学校にさらに留学したその友人からメールが来た。

「彼女が入院した。」

なんでも怪我とかじゃなくて精神的なものらしい。
たしかに付き合ってた頃も結構不思議な子で、金縛りや、独り言は
日常茶飯事で、年中うなされたりひどいと叫んだりしてたのは覚えていた。

ただそこまで酷いとは思っていなかったのでかなりショックを受けた。
その時は日本に帰って様子だけでも見に行くべきかと思ったが、
悲しいもので、学校の単位的にも金銭的にも日本に帰ることは
出来なかった。

214 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:50:52 ID:lJuaYHFz0
それから半年して、夏休みに一時帰国することがあったので、
そのついでに彼女の実家の広島まで行ってみた。
(俺は東京なので、交通費がかなりきつかった。)

住所を頼りに実家を訪問した。どうも様子がおかしいなと
彼女の実家の前で思ったことを覚えている。と言うのも、
なんて説明したらいいか分からんが、なんか色がくすんでた気がした。

インターホンを鳴らすと、彼女の母親が出てきた。
俺を一目見ると、「あなた、○○さん!」と、ほぼ叫んでた。
いきなり叫ばれたのでびびったが、やっぱりその時も変だと思った。

家に入れてもらい居間に通され、彼女の容態を聞こうと思ったとき、
愕然とした。

仏壇に彼女の大きな写真が、そして線香が焚かれていた。
俺はマジで混乱して、どういうことか把握できなかったから
「どうしたんですか!」と叫んだ、叫んですぐさま思ったのは、

「自殺したんだろう」

案の定、入院先から逃げ出してとある雑居ビルから飛び降りたらしい。
その時のことは、正直俺も記憶が今でもあやふやだ。ショックだったし
なにより、やり直すつもりでそれなりの覚悟をしてたからだ。

理由を彼女の母親に尋ねるも、病院に入院していたこともあり、
精神的なものだとしか聞かされなかった。

結局、日も限られていて、墓参りをした次の日には東京に戻り、
その一週間後にはまた自分の留学先に戻った。
留学先の自分の屋根裏のアパートに戻ると、手紙が届いていた。
なんと彼女からだった。正直、生まれて一番びびったかもしれない。

215 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:52:34 ID:lJuaYHFz0
封筒を開けると、酷いものだった。錯乱していた。辛うじて内容は
つかめたが、本当に荒れた字だった。

わたしはしぬ。あれからずっとおいまわされてる。
げんじつにもゆめにもずっと、あのおとと、あのふたりがついてくる。

読める範囲で理解できた言葉はそれだけだった。ただ、デッサンが同封
されており、なんてことは無い俺のアパートの丸窓だった。

俺はあまり泣かないほうだが、この時ばかりは泣いた。
15年ほど前にオヤジが死んだときも泣いたが、それ以上に泣いた。

それを機に、急遽帰国して今に至るわけだが。
帰国する前に、他国へ留学した画学生の国に遊びに行った。

相変わらず飄々としていたが、起こったことをすべて話すと
「黙っていたことがある」といって語り始めた。

なんでも彼女が、俺の家に初めて来て以来、ずっと変な親子に付きまとわ
れていたと言うこと。
なんとなくは予想していたが、当時は、本当にそんなことがあるとは思いも
しなかった。思えば、付き合った半年、後にも先にも彼女はその一度しか家
に泊まっていなかった。

俺にそれを黙っていたのは彼女の思いやりらしく、その画学生の友人も
約束を守り続けていたらしい。

216 :本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 15:53:25 ID:lJuaYHFz0
そしてそれを聞かされあと、俺は留学を取りやめ帰国することを打ち明けた。

すると、「実はもう一つ黙っていたことがある」といい

「その親子の霊は、俺がさっさと祓ってやったんだよ」

そう続けた。「言ってなかったっけな?俺の実家寺なんだ」
そうも言った。いきなり言われたもんだから、信じれなかったが
「そしたら彼女にすごい感謝されちゃってさ」
「それ以来、お前に内緒でちょくちょく会ってたんだ」
「と言うか、ぶっちゃっけ付きあってた・・・でも」

そう言うと、いきなり怖い顔して俺にこう言った
「心までは救えなかったんだ」

帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、飛行機のチケットを手配し、
逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、
帰る前に、彼女との思い出の場所やらなんやらを一通り巡った。

その国での最後の夜に、ちょうど2時過ぎ頃、彼女が丸窓を覗いた頃、

エスカレーターがブーンと鳴り始めた。

俺は覗いた。しかもずっとそのエスカレーターが止まるまで見続けた。

そこには悲しげな眼でこちらを見つめる、彼女がいた。

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