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>>238
目撃者の話
私の住んでいるマンションは大きな公園と隣接しており、窓からはそこを一望することができます。
ある夜、私が一人部屋の中でくつろいでいると、何やら外から男の叫ぶ声が聞こえてくるのです。
不審に思い、カーテンを開けて様子を窺うと、公園のベンチに一人の男が座っているのが目に入りました。
おそらく酔っ払いでしょう。
男は非常に落ち着きがなく、しきりに何かを叫んでは手足をばたつかせているのですが、その言葉は支離滅裂で上手く聞き取ることができません。
時折韓国語のような言葉も混じっていたように思います。
何にせよこのままでは騒々しいので、警察に連絡して男を保護してもらうことにしました。
しかし、そのときです。
私は気づいてしまったのです……。
男は全裸でした。
春とはいえ、まだ少し肌寒い風の吹く夜のことです。
正常な人間のやる行為ではない。
私はうなじの毛がぞっと逆立つのを感じていました。
しかしその場から動くことはできません。
何かに魅入られたように、男から目を離すことができないのです。
そして、今まで私に背を向けていた男が、ゆっくりとこちらに振り返ります。
完全に体が正面を向いたとき、男の顔は下に俯いた状態で、その表情を窺い知ることはできません。
しかし、それも段々と上を向き始め、私の立っている窓辺を、その黄色く濁った視線が捕らえようとしたそのとき
「破ぁ――!!」
不意に大きな声が、私の呪縛を打ち破りました。
そこに立っていたのは寺生まれのTさんです。
「善良な芸能人にとり憑くとはあくどい奴、許せん!」
Tさんの両手から現れた眩い光線が男の胸を射し貫く……前に警察が現れて男を連行していきました。
ついでにTさんもパトカーに乗せられていました。
国家権力ってすごい。
改めてそう思いました。